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判例紹介

【事例10】
弁護士報酬の額について争いになったら?
【事案の概要】

 この判決は、当該弁護士の事務所の報酬基準により算定される金額とは異なる金額とする旨の合意の成立が認定されたものです。

【コメント】

 「合意」が認定できるのであれば、それに従うのが当然であり、上記判例は、理論上、特に目新しいことを言っているわけではありませんが、「なお書き」の中で、報酬基準の算定要素としての「経済的利益」の額の算定方法についても言及しており、この点が注目される点です。
 弁護士の報酬の決め方が分かりにくいというご批判はよく耳にしますが、普通は、依頼事項を解決することにより依頼者に生じる経済的利益の何%という形で着手金、成功報酬を決めることが多いのです。上記の判例の事案は、(1)土地を購入したが、代金支払い期限を延期してもらったうえで、(2)その土地を転売してほしい、というものであったらしいのですが、これは一つの依頼か二つの依頼か、二つとしてそれぞれの「経済的利益」はどのように算定するか、がそれぞれ問題になるわけです。第一審は、(1)につき購入代金、(2)につき転売価格をそれぞれ「経済的利益」と認定し、弁護士報酬を算定しましたが、第二審は、(1)につき「支払延期合意が成功することにより依頼者が支払いを免れる違約金額」を、(2)は転売価格をそれぞれ「経済的利益」と判断しています。但し、(2)の「経済的利益」については「転売価格から(1)の購入代金と転売費用を控除した額(転売利益)」であるという主張もなされたようです。
 このように、裁判所間でも考え方が異なり、また別の考え方もあり得るわけなので、「経済的利益」は一筋縄ではいきません。実際、上記の例でも、第一審は3億円を支払えという判決だったものが、第二審では、別個の合意を認定したこともあり、2000万円弱を支払えということになっています。夢のような金額ですが、これだけ金額が違ってしまうのでは裁判になってもおかしくはないということになります。
 もちろん、平成16年4月1日以降、弁護士報酬は自由化されましたので、上記「経済的利益」がすべてではありませんが、まだこの基準を用いている弁護士が多いことも事実です。そして、弁護士により「経済的利益」の考え方自体に差が生じ得るということは、弁護士から当初提示される金額自体にもかなりの差が生じ得ることを意味し、そのことが弁護士報酬を分かりにくくしている面があることも否めません。
 いずれにしても、「どの額で合意するか」が決定的に重要であるわけですから、弁護士に依頼をされる方も、弁護士の提示をうのみにするのではなく、一体この事件を依頼することにより自分にはどういう経済的利益が生じるのかということについて整理したうえで、弁護士と話し合われ、納得して合意したことはきちんと文書にしておくことが涵養かと思われます。

【参考】

判例時報2051号54頁
『不動産売買契約に関する事務処理の委任を受けた弁護士の報酬等について当該弁護士の事務所の報酬基準により算定される金額とは異なる金額とする旨の合意の成立が認定された事例』(東京高裁平成20年12月25日判決)

2009年12月9日 弁護士 西村良明

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