判例紹介
保証契約を締結した保証人への請求が認められないことがある?
本件は、x1社がY社に対して400万円を貸し付けた際、借入金債務についてy1(Y社の代表取締役)が連帯保証をしたことに基づいて、X社がy1に保証債務の履行を請求したというものです。
本来であれば、y1は連帯保証人として債務を履行する義務を負うはずです。
しかし、本判決は、以下の事情を挙げて、X社の請求を権利濫用として排斥しました。
- (1)
- X社グループが全額出資してY社を設立(子会社)。
- (2)
- X社グループは、Y社との間で経営顧問契約を締結し、顧問料としてY社の売上の約66%を取得(利益の搾取)。
- (3)
- X社グループが、Y社の代表者印、預金通帳を掌握(財務の掌握)。
- (4)
- X社グループが、Y社の売上の目標の設定を始め個々の業務を取り仕切る(業務遂行に裁量権なし)。
- (5)
- y1は、X社によって半強制的にY社の代表取締役にさせられ、勤務実態等については単なる従業員とほとんど異ならない(名ばかり代表取締役)。
(1)~(5)のような経営体制下では、y1が、X社との保証契約(この契約内容も利限法を越える利息及び損害金の約定がなされていました)の締結を拒むことは事実上困難でした。そのようなy1に対して、x1社がY社の資金繰りが行き詰まるおそれがあることを認識していながら貸し付けた金銭の保証債務の履行を請求することは権利の濫用にあたり許されないとしたのです。
保証債務の履行請求が権利濫用とされる例は判例上そう多くありません。ただ、本件のように、会社の資本関係・人的関係が親会社に握られ、実質上経営の裁量がないといういわゆる形骸化の実態自体はよく見られます。その中で、代表取締役が自身の会社の債務の保証人になるといういわゆる経営者保証の場合に、その代表取締役に対する保証債務の履行請求が認められなかったという意味で、注目に値する判決と言えるでしょう。
判例時報2071号38頁
『A社の財務部門を法人化して設立され、A社を中核とするグループに属するX社が、上記グループに属するB社に金員を貸し付け、B社の代表取締役であるYがこの貸し付けに係るB社の借入金債務を保証した場合において、B社が既に事業を停止している状況下で、X社がYに対して保証債務の履行を請求することが権利の濫用に当たるとされた事例』(最高裁平成22年1月29日判決)
