平成26年5月30日
新設・改正・廃止が頻繁に行われる助成金ですが、2014年度の予算成立を受け、今回も多数の助成金が新設・改正されました。
その中で、今回は、高齢者雇用に役立つ助成金をご紹介したいと思います。大きく新規雇用の際利用できる助成金と、現在雇用されている高齢者の活用促進を支援する助成金の2種類があります。
なお、各助成金における中小企業事業主の範囲は、「資本金の額・出資の総額」「常時使用する労働者の数」のいずれかが下表に該当する事業主です。
資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 | |
---|---|---|
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
特定求職者雇用開発助成金
就職困難な高年齢者や障害者等を雇い入れたときに支給される助成金です。高年齢者については60歳以上65歳未満の方が対象となります。
対象労働者 (一般被保険者) |
支給額 | 助成対象期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | ||
短時間労働者以外 | 高齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 | 50万円 | 90万円 | 1年 | 1年 |
重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 50万円 | 135万円 | 1年 | 1年6ヶ月 | |
重度障害者等※1 | 100万円 | 240万円 | 1年6ヶ月 | 2年 | |
短時間労働者※2 | 高齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 | 30万円 | 60万円 | 1年 | 1年 |
身体・知的・精神障害者 | 30万円 | 90万円 | 1年 | 1年6ヶ月 |
(※1)重度身体・知的障害者・精神障害者、45歳以上の身体・知的障害者
(※2)週当たりの所定労働時間が20時間以上30時間未満の者
なお、本助成金の詳細については、厚生労働省のHPをご覧下さい。
こちらをご参照下さい。
高年齢者雇用安定助成金
定年を控えた高年齢者で、その知識経験を活かすことのできる他の企業での雇用を希望する者を、民間の職業紹介事業者や公共職業安定所(ハローワーク)の紹介により雇い入れたときに支給される助成金です。
なお、グループ企業等での移籍は認められませんのでご注意下さい。
短時間労働者以外の者の場合 70万円
短時間労働者の場合 40万円
1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いることが条件となります。
この助成金は、今回の改正により、民間の職業紹介事業者に加えてハローワークの紹介による雇い入れに対しても助成されるようになりましたので、利用機会が増えていくものと思われます。
なお、本助成金の詳細については、厚生労働省のHPをご覧下さい。
高年齢者の活用促進のための雇用環境整備に要した費用が対象です。
なお、計画実施期間内に着手し、支給申請日までに支払が完了していることが必要です。
この助成金の対象となるコースは以下のとおりです。
① 新たな事業分野への進出等
高年齢者が働きやすい事業分野への進出や高年齢者の就労に向く作業の切り出し(職務再設計)を行う場合
例えば、今まで外注していたホテル内で使用するリネン類のクリーニングを、自社倉庫の空きスペースを利用して自社で行う場合に、その倉庫改修費やクリーニング機器購入費などが助成の対象となります。
② 機械設備の導入等
高年齢者が就労可能となるような、機械設備の改善、作業方法の改善、作業環境の改善を行う場合
例えば、作業負荷を軽減するために荷物運搬用のフォークリフトを購入する場合の購入費が助成の対象となります。
③ 高年齢者の雇用管理制度の整備
短時間勤務制度・在宅勤務制度の導入、高年齢者に関する賃金・能力評価制度等の構築、専門職制度の導入、研修等能力開発プログラムの開発などを行う場合
例えば、専門家に相談して定年後の再雇用制度を見直し、新たに短時間勤務制度を導入し管理システムを構築する場合のコンサルタント経費や管理システム開発費などが助成の対象となります。
④ 70歳以上まで働ける制度の導入
70歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、65歳以上への定年の引上げ及び希望者全員70歳以上までの継続雇用制度の導入などを行う場合
支給対象経費の3分の2(上限1000万円)
ただし、対象となる1年以上継続して雇用している60歳以上の雇用保険被保険者1人あたり20万円が上限
平成25年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法によって、原則65歳までの希望者の再雇用が義務付けられるようになり、年金支給開始年齢の引き上げが続けば、今後もその動きが加速化されることが予想されます。そして、事業所に占める高齢者の割合が増加すると、高齢者のモラールや生産性の向上を促す職場環境づくりが求められます。
この助成金はその一助となるものであり、今回の改正により平成26年4月1日から上限額が500万円から1000万円に引き上げられましたので、現在、高齢者を雇用しておられる方にとっては注目の助成金です。