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企業支援エトセトラ

平成26年8月27日

6.内部統制について考えてみませんか?② -統制環境とは?-

6つの要素

内部統制のプロセスは以下の6つの基本的要素から成ります。内部統制の構築の手法は、個々の会社の環境や事業の特性等によって異なるものであり、全ての企業に一律の制度の構築を求めるものではありません。しかし、考え方としては共通するものがあり、その共通項をまとめたのが基本的要素です。これは、御社の内部統制が有効に機能しているかどうかを考える際に参考となる視点です。

統制環境
リスクの評価と対応
統制活動
情報と伝達
モニタリング
ITへの対応

(1)統制環境

意見書によると、「統制環境とは、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に影響を及ぼす基盤をいう。」とされています。難しいですが、「企業風土を決定する基盤」と言い換えても良いと思います。

統制環境には、

誠実性及び倫理観
経営者の意向及び姿勢
経営方針及び経営戦略
取締役会及び監査役又は監査委員会の有する機能
組織構造及び慣行
権限及び職責
人的資源に対する方針と管理

等の事項が含まれます。

 

これらの要素については上場会社や大会社ではない限り、必ずしも全てを充足する必要はないと思われます。要は、会社の規模や業種・業態に対応した、身の丈に応じた統制環境の構築が必要です。そこで、業種・業態に関わりなく、中小企業一般でも参考にすべき事項に絞って具体例を示したいと思います。

 
【①誠実性及び倫理観】

言うまでもなく、これは社員一人一人の活動の根底にあるべきものです。近年SNSを利用し、社員が「ちょっとした悪ふざけ」のつもりでした行為がマスコミでも大きく取り上げられました。例えば、コンビニエンスストアのアルバイト社員が、商品の上に寝転がった写真をSNSに投稿したり、著名人が店舗に訪れたことをその店舗の社員が投稿したり。当該社員に誠実性や倫理観が備わっていれば、このような事件は起きなかったはずです。

誠実性や倫理観を社員に教えるというのも抽象的で難しい話ですが、社長自ら、徹底的に会社の理念に基づいて行動する、その姿勢を多くの社員の目に触れさせることによって、これらは育っていくのだと思います。

  
【②経営者の意向及び姿勢】

経営者の皆さんは、信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割を含め、財務報告の基本方針を明確に示していますか?

銀行から融資を受けるために黒字を装ったり、納税を免れるために赤字を装ったり、程度の差こそあれ、ちょっとした粉飾をしたことはありませんか?会社の資金と経営者個人の生活費の分離は確保されていますか。

社員に誠実性及び倫理観を求める以上、経営者自らが率先して、誠実性及び倫理観に基づいた財務報告の基本方針を示し、それを実践していくことが必要です。ここでは財務報告を例に挙げましたが、会社におけるあらゆる行動を社員が見ていることを常に忘れないでください。

 
【⑥権限及び職責】

従業員等に対する権限と責任の委任は、無制限ではなく、適切な範囲に限定されていますか?

会社のお金を社員が使い込んだというようなケースを聞くのは珍しくありません。これは、従業員の権能と職責が明確に区別されていないことから起こるのです。取引先に対する支払が決まったとき、支払の決定権限、振り込む権限、支払を承認する権限が明確に区分され、各自がその役割を適切に遂行していれば、使い込みの可能性はぐんと低くなるでしょう。直ちにばれて解雇され、刑事責任を問われることを予測しながら使い込むリスクは格段に減るはずです。

 
【⑦人的資源に対する方針と管理】

経営者の皆さんは、従業員等に職務の遂行に必要となる手段や訓練等を提供し、従業員等の能力を引き出すことを支援していますか?

有能な従業員が同業他社に引き抜かれるリスクは、どこの企業にもあると思います。これを予防するためには、その従業員に適した給料を考えるだけでなく、研修や福利厚生を充実させ、従業員一人一人が成長できる企業にすることが必要です。

 

各項目で挙げた質問は一例ですが、このように見てみると、この「統制環境」がこれから述べる他の5つの要素の土台となることがよくお分かり頂けると思います。

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