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企業支援エトセトラ

平成26年11月30日

12.内部統制について考えてみませんか?④ -内部統制制度構築の手順-

今まで、内部統制の目的や盛り込まれるべき要素を見てきました。では、内部統制制度はどのように構築していくのでしょうか。具体的な手順をみてみましょう。

 

基本的計画及び方針の決定

内部統制制度の構築は、単なる理想論ではなく、法律の規定をもって要求されているものです。会社法は、取締役会設置会社において、内部統制に関する決定を取締役会の専決事項としています(会社法362条4項6号)。ですから、取締役会で定めた方針に従い、経営者又は担当取締役が責任をもって構築を進めていくことが重要です。

まず、取締役会でどのような事項について制度に盛り込むか大きな方針を決めましょう。これには、上記の会社法の条文を受けた会社法施行規則の100条1項の規定が参考になります。同条項は、

取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
損失の危険の管理に関する規程その他の体制
取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

については、取締役会で定めるよう規定しています。こちらを細分化して、また、前に挙げた4つの目的及び6つの要素も考慮しながら、内部統制に盛り込むべき項目を表に落とし込んでいきましょう。その上で、各分野の制度を構築するにあたっての責任者やメンバー、手順、日程等を表に盛り込んでいきましょう。

ここで注意すべきは、進捗状況を常時更新していける表を作成することです。企業法務に携わらせて頂いて思うのは、最初に作成する計画表は詳細でビジュアル的にも見やすく非常に分かりやすいのですが、残念ながら「作りっぱなし」になっており、進捗に合わせたフォローができていないことが多いということです。また、その後、より詳細な別の計画表が出来上がり、当初の計画表との関係が分からなくなっているというようなこともあります。計画表は目的実現のツールにすぎないのですから、分かれば良いのです。ですが、各人の作業が全体の計画のどこに位置づけられているかが、一目で分かるような計画表を作るべきです。

内部統制の整備状況の把握

内部統制制度の構築といっても、ゼロから制度を作っていくのではなく、実際には、既存の規程、細則、ガイドライン等のルールの整備作業が中心になるでしょう。そのために、方針が決定し、計画ができたら、まず、現行の内部統制制度の整備状況を把握し、その結果を記録・保存していきましょう。

整備にあたっては、まず、組織の重要な各業務プロセスについて、取引の流れ、会計処理の過程を、必要に応じ図や表を活用して整理し、理解することが重要です。そして、これらの各業務プロセスについて虚偽記載の発生するリスクを識別し、それらのリスクがいかなる財務報告又は勘定科目等と関連性を有するのか、また、識別されたリスクが業務の中に組み込まれた内部統制によって、十分に低減できるものになっているか、必要に応じ図や表を活用して、検討していきます

企業会計審議会が平成23年に作成した内部統制に関する意見書に、参考になる図表が掲載されていますので、引用します。

業務の流れのフローチャートを作成するのは大変な作業ですが、これを作ると、事業所ごと、部署ごとに作業手順にばらつきが生じていないかを容易に把握することができます。また、各部署や担当者の権限及び責任の範囲も明確になります

中には、習慣化されているが、明文化はされていないという工程もたくさん出てくると思います。それらについても、重要なものは明文化する必要があります。不備・不正が発生したときに、明文の規定がないと責任の所在も不明確になってしまいます。

リスクの洗い出し作業にあたっては、各人がこれまでに経験したヒヤリハットを持ち寄りましょう。どんな些細な体験談でもここで正直に話しておくことで、より大きな不祥事を防止することができます。

把握された内部統制の不備への対応及び是正

整備状況の把握の過程で把握された不備については是正措置をとる必要があります。現状の内部統制が、虚偽記載の発生するリスクを十分に低減できるものとなっているかどうかを確認し、規程・細則・ガイドライン等を体系的に整備していきましょう。明文化されていないものは明文化し、あらゆるリスクに対応しうる工程を盛り込んでおきましょう。上記の2で状況把握のために用いた図表を規程に添付しておくのも良いと思います

社員の方と話をしていると、規程があるのは知っているが何が書かれているか知らない、そもそも規程があること自体知らないというような事態はよくあるようです。内部統制の整備がひととおり終われば、整備担当者は、整備後の制度について社員に説明会を行うようにしましょう。業務規程や経理規程等上位規程になればなるほど、記載内容が抽象的になり分かりにくいところもありますが、日々の作業の拠り所となる細則やガイドラインは、全社員が内容を把握しておく必要があります

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