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企業支援エトセトラ

令和4年10月17日

44.人権デューデリジェンス

去る8月、経産省が作成した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(人権DDガイドライン)(案)に関するパブリックコメントが終わり、政府は、翌9月、ガイドラインを公表しました。

本ガイドラインは、先立つ、国連指導原則、OECD多国籍企業行動指針およびILO多国籍企業宣言をはじめとする国際スタンダードを踏まえ、具体的かつわかりやすく解説し、その取組を促進することを目的として策定されました。

本ガイドラインは、企業には、人権を尊重する責任があるということを謳っています。企業活動を行うに当たり、人権への負の影響の防止・軽減救済をしなければならないとしています。

名宛人は、上場企業だけではありません。企業の規模、業種等にかかわらず、日本で事業活動を行う全ての企業(個人事業主を含む。)を対象にしています。

本ガイドラインは法的拘束力を有するものとはしていないので、これを根拠に行政処分の対象にはなりません。

しかし、現在、欧州を中心として人権尊重に向けた取組を企業に義務付ける国内法の導入が進み、米国等で強制労働を理由とする輸入差止を含む人権侵害に関連する法規制が強化されているところ、直接これらの法規制の適用を受けない企業でも、適用企業から間接的に同旨の順守を要請されたり、今後の規制の強化や適用範囲の拡張に対応することが求められます

 

人権デューデリは、以下のステップから構成されます。

① 負の影響の特定・評価

例えば、技能実習生(外国人)に対して、その脆弱な立場を利用して、賃金差別などしていないか調査する。

児童労働によって製造された製品をサプライヤーから購入していないか調査する。

 

② 負の影響の防止・軽減

例えば、技能実習生の旅券(パスポート)を保管したことが発覚したサプライヤーに対し、事実の確認や改善報告を求め、改善がない場合取引を停止する。

児童労働が発覚したサプライヤーに対して、本人確認書類のチェック等の児童の雇用を防ぐための適切な管理体制の構築を要請する。

③ 取組の実効性評価

例えば、定期的な内部監査の項目に、人権尊重のためになしてきた取組の効果を盛り込む。

サプライヤーに対して、人権尊重のための取組が改善されているか調査する。

④ 説明・情報開示

例えば、企業のホームページ上で記載したり、統合報告書などで上記①乃至③を公開する。

 

人権尊重の取組の全体像

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