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企業支援エトセトラ

令和4年11月15日

45.経営者保証の原則回避

政府の物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策(令和4年10月28日閣議決定)において、「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を年内に取りまとめる」とされたところです。また、スタートアップ事業推進のため、創業時に信用保証を受ける場合に経営者のリスクを軽減するために個人保証を不要とする等の制度の見直しを図ることとされました。

本経済対策は、新しい資本主義の旗印の下、「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」を重点分野とし、日本経済の再生を図ろうとするものです。

経営者保証の原則回避の政策誘導は、本経済対策の目標達成手段として位置づけられました。  

従来、中小企業の融資に対しては、経営者保証が求められてきました(平成25年の調査では借入のある中小企業のうち8割超)。経営者保証には以下のような弊害があったことが指摘されていました(令和26年中小企業庁資料)。

① 経営者保証への依存により、借り手・貸し手双方が本来期待される機能(情報開示、事業目利き)を発揮してしく意欲を阻害してきたこと

② 経営者保証の融資慣行化が、貸し手側の説明不足、過大な保証債務負担の要求とともに、借り手・貸し手聞の信頼関係構築の意欲を阻害してきたこと

③ 経営者の原則交代、不明確な履行基準、保証債務の残存等の保証履行時等の課題が、中小企業の創業、成長・発展、早期の再生着手、円滑な事業承継等、事業取組の意欲を阻害してきたこと

 

そこで、平成25年に「中小企業における個人保証等の在り方研究会」が設置され、「中小企業等における個人保証等の在り方研究会報告書」の公表を経、平成26年2月、過度な経営者保証への依存から脱却するために、「経営者保証に関するガイドライン」が施行されました。その後、その解釈通達に相当するQ&Aが数次にわたり改訂され、現在に至りました。現在の経営者保証割合は、約3割といわれています。

 

11月1日、来年4月の施行を目指し、金融機関の監督指針(案)が発表されました。その要旨は、金融機関に対して、経営者保証の必要性を合理的に説明できない限り、これを求めることができなくなる、ということです。これにより、起業、設備投資、事業承継がしやすくなります。

もっとも、借り手である企業に対しては、無条件ではなく、経営者保証不要の基準を満たすことが求められます。いわゆる、経営者保証ガイドラインの3要件といわれるものです。

① 法人と個人の資産が明確に分離されている

② 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能

③ 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

当たり前のことですが、法人が、実態として、投資により付加価値を生み出し、その付加価値から投資のために得た融資を返済できるサイクルを確保し、かつ、これを外に証明できることが必要です。その柱は、稼げるビジネスモデルの確立と、これを支える真面目な会計帳簿の作成です。

 

(金融機関の経営者保証契約基準の変化)

  新(案)
保証契約締結の制限と解消 保証契約の必要性 どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容(a)
(新設) どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか、個別具体の内容(b)
原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること 経営者保証の必要性が解消された場合には、保証契約の変更・解除等の見直しの可能性があること(c)
説明義務 保証契約を締結する場合に上記の説明義務 aからcの説明と記録保存義務
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