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民法改正について

2019年1月13日

13.その13、債権譲渡に関する改正(3)

今回は、債権譲渡に関する民法の規定が具体的にどのように改正されたか、の続きです。

まず、将来発生する債権は譲渡できるか、という問題がありました。理念的には、まだ発生してもいないものは「無」なのだから「無」を譲渡することに意味はない、という考え方もあるのでしょうが、継続的取引関係がありますと、将来的にもほぼ確実に一定額の債権が発生し得るわけですので、そういったものを担保のために譲渡するということは現実的であり、実際、例えば「今年の6月から12月に発生することの予測されるA社に対する売掛債権(予測では△△万円)を担保に○○万円借入れる」ということは行われており、お金を貸す方も、「△△万円の売上」が十分予測できるものであるなら、その貸付に応じていました。現実の取引社会で実際に行われており、それなりの有用性もあるのであれば、これを無効だということは非現実的です。そのため、学説や判例もその有効性を認めてはいましたが、今回そのことが明文を持って認められました(新法467条)。

また、前回、譲渡禁止特約の付された債権も譲渡できる(譲渡は有効である)と申し上げました(新法466条2項)が、預貯金債権については例外とされています。すなわち、預貯金債権について当事者がした譲渡制限の意思表示は466条2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がなされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる、と定められています(466条の5、1項)。預貯金債権はその数も飛躍的に多く、常時変動する債権債務関係ですので、画一的処理が望ましく、譲渡自由を原則とすることに馴染まないと考えられたものと思われます。

次に、債務者保護の規定として、譲渡禁止特約の付された債権が譲渡された場合、債務者に供託する権限が与えられました(新法466条の2、1項)。前回申し上げましたように、このような債権の譲渡も有効になったのですが、債務者は、譲受人が債権譲渡禁止特約を知っており、あるいは知らないにしても重大な過失により知らない場合は譲受人に支払えました。しかし、考えてみれば、譲受人が知っていたとか、重大な過失があったというようなことは、それほど自明なことではなく、債務者としてはそんなことに巻き込まれたくはありません。しかし、いずれかに支払わないと債務不履行になってしまいます。そこで供託を認めたわけです。この供託金は、譲受人のみが還付を受けられます(同条2項)。

また、譲受人保護の規定として、同じく供託に関しますが、債権者(譲渡人)が破産した場合、譲受人に、債務者に対し供託させる権利を認めました(466条の3)。この場合も譲受人のみがその還付を請求できますので、譲受人が優先的に譲渡し人に対する債権を回収できるということになります。 簡単ですが、これで債権譲渡の項を終えることにします。

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