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民法改正について

令和2年3月4日

15.契約不適合ルール(2)

前回に引き続き,売買契約等における契約不適合責任につきご説明させて頂きます。

「引き渡された目的物が~契約の内容に適合しないものであるとき」(562条1項)

「引き渡された目的物が種類、品質」「に関して契約の内容に適合しないもの」とは,物質的なものに限られず,適用法令に違反する場合等も含まれ,これらは従来の判例法理に従った運用になると考えられます。

「数量」について,旧法は数量指示売買の解釈で,当事者が数量に特別の意味を与え,かつ,その数量を基礎として売買代金が定められた場合にのみ,担保責任を認めていました。他方,新法では,上記数量指示売買に加えて,一定の数量の目的物の引き渡しが売買契約において示された場合,当該数量に満たない数量が引き渡されたときは,契約不適合責任が生じるものと考えられています。

「履行の追完」(562条1項)(効果①)

新法では,追完請求権が明文により規定されました。これは,新法が引き渡された目的物が契約に適合しない場合は,債務不履行であり,契約不適合責任が債務不履行責任の特則であることを明らかにした規定であるといえます。

そして履行の追完については,売主の買主に対する「目的物の修補」,「代替物の引渡し又は不足分の引渡し」により行われることとなります。これらの方法を買主が選択して,売主に請求することになるのですが,売主は「買主に不相当な負担」を課さない限りで,買主が選択した方法により履行を追完することができます。

「代金の減額」(563条)(効果②)

新法では,数量指示売買の場合だけでなく,ひろく担保責任の効果として,代金減額請求権を認めています。

代金減額請求権の行使には,原則として,相当期間を定めて履行の追完を催告する必要があり,当該相当期間内に履行の追完がないことが必要となります(563条1項)。

    

また,例外として履行の追完が不可能なとき等563条2項各号の事由が認められる場合には,催告をすることなく,代金減額請求権を行使することができます。

「損害賠償の請求」(564条,415条),「解除権の行使」(564条,541条)(効果③,④)

瑕疵担保責任では従来より損害賠償請求及び解除権の行使が認められてきましたが,新法では,債務不履行の条文を引用し,契約不適合責任における損害賠償請求及び解除権の行使が債務不履行責任の適用を受ける一場面であることを明らかにしました。

これにより,賠償の範囲につき,履行利益の賠償すなわち,契約が履行されていた際に買主が得たであろう利益の賠償が争いなく認められることとなりました。

また,解除権の行使について,541条1項を準用することにより,履行の追完の催告が必要であることが明文で定められることとなりました。

買主の権利の期間制限(566条)

買主は以上の契約不適合責任を売主に追及するためには,目的物の引き渡しを受けた後,目的物が契約不適合であることを知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要があります。また,目的物の引渡時より10年を経過すると,契約不適合責任による各種権利が消滅時効により消滅するものと考えられています。

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