よくある法律相談(一般民事編)
夫と離婚することになりました。現在小学生の娘がおり、私が娘の親権者となったので娘のためには今の名字を使い続けた方がいいかなと考えています。ただ、夫の名字を一生使い続けるのは嫌です。娘が大きくなってから戻すことはできますか?(40歳・主婦・女性Cさん)
あなたは、結婚して夫の姓を名乗っていたのですね。ご質問にお答えする前に、まず、前提をご説明します。
離婚すると、当然、結婚前の姓に戻ります。
したがって、婚姻中の姓を使い続けたいのであれば、離婚後3か月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しなければなりません(離婚届と同時でも可)。これを提出すれば婚姻中の姓を使い続けることができます。
では、ご質問に戻ります。これは、離婚の際、この届を提出していたとして、10年、15年経った後に戻せるかということですね。
結論から言いますと、家庭裁判所の許可があれば、変更することは可能です。ただ、家庭裁判所は「やむを得ない事由」がある場合でなければ、許可してくれません。
この「やむを得ない事由」ですが、判例上、社会生活に支障をきたすような客観的な事情がある場合や、離婚後に婚姻中の姓を使用していた期間が短く、その姓の使用が社会に定着しているとはいえない場合等には認められやすくなっています。
この他にも、婚姻中の姓を使用することが耐えられないという主観的な理由による場合に認められているケースもあるようです。例えば、「人の氏は、生来の氏が本来的なものであり、離婚後、婚氏を称することは例外的なことに属するから、たとえ、婚氏が社会的に定着していると考えられる場合においても、婚氏を称することに耐えられなくなったときは、債権者の追及を逃れるなど不当な目的があるとか、何度も氏を変更することになるなど、社会的に弊害を生ぜしめる事情がない限り、戸籍法107条1項所定の『やむを得ない事由』に該当すると解するのが相当である。」と判断されているものがあります(仙台家庭裁判所石巻支部平成5年2月15日)。しかし、裁判所の判断は区々ですし、上記判例についても、審判した裁判所自ら「かなり限界的な事例」と述べています。
したがって、客観的な不都合がないにもかかわらず、単に「嫌だ」というだけで旧姓に戻せるかというと、難しいかもしれません。
なお、婚姻中の姓を使い続けるかどうかの判断には、離婚後3か月の猶予期間があります。氏の変更が認められないリスクも考慮に入れながら、ゆっくりご検討ください。
