連載: 特許権について(4)
「職務発明について」
今回は職務発明について少しお話ししましょう。
職務発明とは、従業員等が会社の業務として、かつ、その従業員の現在又は過去の職務に基づき研究開発した発明のことを指します。このような職務発明は、本来は発明を行った従業員に帰属し、会社には特許が成立した場合に通常実施権が帰属するに過ぎません。しかし、発明をした従業員自身の努力や才能もさることながら、企業が設備や費用を提供するという一定の貢献なくして職務発明は生まれません。そこで、多くの企業でも実施しているように、予め発明に関する権利を会社が譲り受けられるように就業規則等で定めておくことも出来ます。
そして、その場合、特許を受ける権利又は特許権を会社に承継させる対価として、会社は当該従業員に対して相当の対価を支払わなければなりません。この点、青色発光ダイオードの判決で200億円もの職務発明の対価が認められ、大いに世間を賑わせたことは皆さんも覚えておられるでしょう。対価額について争いになった場合、最終的には裁判所の心証により決まるのですが、平成16年度の特許法の改正により、相当額の判断基準は少し変わりました。つまり、従前は、当該発明によって会社が受けるべき利益の額及びその発明がされるにあたっての会社の貢献度を考慮して額を定めていましたが、特許法の改正により、原則として会社と従業員との間の自主的な取り決めで定めた額によることとなったのです。具体的には、基準の策定に際しての当事者の協議の状況、策定された基準の開示状況、従業員からの意見聴取状況を考慮して定めた基準が不合理でない限り、その額が相当な対価額とされるようになりました。ただ、取り決めが不合理である場合には、会社の利益の額や貢献度も考慮して相当の対価が決められることになり、取り決めが不合理か否かの判断は会社と従業員との間で十分な協議があったか否かといった手続面が重視されます。
そこで、職務発明規程を作成する場合には、基準の策定に際して、(1)従業員等から十分な意見の聴取を行うこと、(2)会社と従業員との間で十分な協議を行った上で基準を策定すること、(3)策定された基準を従業員に開示しておくこと、(4)定めた基準によって対価を支払うことが不合理と認められないような基準としておくこと、などが必要となるでしょう。
なお、職務発明に基づく相当な対価の請求については、従来は退職した従業員からなされることが多くありました。この点、相当な対価の請求権についても10年の消滅時効にかかりますので、もし従業員から職務発明に基づく対価の請求をされた場合にはには、消滅時効にかかっていないかについての検討も忘れないようにしましょう。