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連載: 渉外関係エトセトラ 売買契約(4)

「その他の異常時の対処規定について」

 前回は、売買契約について、紛争解決方法の重要な要素である裁判管轄、準拠法の問題についてお話ししました。今回は、その他の異常時の対処規定について見ていきたいと思います。
 異常時を詳しく見れば、本来的に、一方の当事者に責任を追及できるカテゴリーと責任を追及できないカテゴリーとに分けられます。
 前者は、債務不履行が相手方の責任であるもののこれが是正できそうな場合、是正できない場合、後者は、債務不履行に双方とも責任無く是正できそうな場合、是正できない場合、債務の履行とは直接関係ないものの双方の契約関係の存続に影響を及ぼす事情がある場合などがあります。

債務不履行(1)債務不履行が相手方の責任で、かつ、是正できそうな場合(Curable default attributable to either party)
 典型例は買い主の立場、売り主の立場のそれぞれからあります。売主側では、商品を約定の期日までに配達できない場合、商品を配達したものの数量、品質などに問題がある場合(事後に判明するものも含みます。)、第三者の知的財産権を侵害している場合などです。買主側では、約定の期日までに代金を支払わない場合、最低購入量を満たさない場合(継続的売買契約の場合)、特約に反して販売する場合(決められたテリトリー外に販売、他社ブランドの商品も仕入れた場合など)などがあります。両者に共通することとして、担保提供義務に反して担保を提供しない、秘密保持義務に反して秘密を第三者に告知したり、競業禁止義務に反して、競業行為を行ったときでも、違反が軽微である場合などがあります。
 当事者の一方に債務不履行があっても、一般に契約を即解除することは望まないでしょう。特に継続的商品売買契約の場合は尚更です。
 そこで、債務不履行のある相手方に対し、履行の機会を与えるのが通常です。すなわち、期限を定めて催告し、その期限内に履行できなかったときに始めて契約を解除することになります。損害賠償請求権も発生します。

(2)債務不履行が相手方の責任で、かつ、是正できない場合(Non-curable default attributable to either party)
 売主側では、倒産するなどして製造又は仕入れができない場合、目的物を第三者に売ってしまったところ代替品がない場合、クリスマス商戦用に受注したもののクリスマスの納期に間に合わない場合などです。買主側では、倒産するなどして支払ができない場合などです。両者に共通することとして、秘密保持義務に反して重要な秘密を漏えいしたり、競業禁止義務に反して、重大な競業行為を行い、信頼関係が回復しがたい場合などです。
 このような場合、(1)と反対に、契約を継続することの意味がありません。
 そこで、債務不履行のある相手方に対し、履行の機会を与えず、即、契約を解除することになります。損害賠償請求権も発生します。

(3)債務不履行に双方とも責任無く、かつ、是正できる場合(Curable default attiributable to neither party)
 買主が注文した代替性のある商品について売主が倉庫に保管しておいたところ隣家の失火が原因で滅失してしまった場合(危険負担の移転(risk))、国家レベルの大規模なストライキなどが原因で売主が配達できない場合(不可抗力(Force Majeure))などがあります。
 前者については、場合分けが必要です。これは所有権の移転時期と関連する問題です。目的物が滅失したときにその危険をどちらが負担するかの問題です。日本の民法では、発送準備さえ終わっていなければ売主は改めて商品を発送しなければなりません。他方、買主が受け取りに来る約束で、売主が目的物を特定して、他の商品から分離して、通知をしているような場合、売主は再度商品を調達する義務は免れ、かつ、買主は代金を支払わなければなりません。もちろん、所有権の移転時期、危険の移転時期については、国により法制が異なるので、契約上明文の規定を挿入する必要があります。売主に再調達義務があるときは、原則通りです。これに対し、後者については、履行時期が遅れることになっても、売主は、不可抗力が止むなり配達し、遅延損害金を負担しないのが、一般です。

(4)債務不履行に双方とも責任なく、かつ、是正できない場合(Non-curable default attributable to neither party)
 前記(3)の前者のうち、買主が受け取りに来る契約で、目的物の準備・分離・通知が終わっている場合、商品生産の工場が地震などにより倒壊し、製造復旧の目途が立たない場合などです。
いずれの場合も、売主の商品引渡義務は消滅します。もっとも、前者について、買主に代金支払い義務は残ってしまいます。契約解除には直結しません。損害賠償請求権も発生しません。

 次回には、債務の履行とは直接関係ないものの双方の契約関係の存続に影響を及ぼす事情がある場合の対処規定について見ていきます。

2010年6月7日 弁護士 安生誠