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社会保険労務

平成24年10月1日

1.あなたの会社の就業規則、大丈夫ですか?

あなたの会社には 就業規則使用者が制定する労働条件の画一化・明確化のため、就業時間・賃金・退職・職場規律等について労働基準法において定められた規則のこと。はありますか?

労働基準法上、パートタイマーや嘱託社員も含めて常時10人以上の労働者を使用する会社は、就業規則を作成した上で、労働基準監督署に届け出なければならないと定められています。作成しないと罰則があります(条文http://www.houko.com/00/01/S22/049.HTM#s13)(30万円以下の罰金)。しかし、罰則を免れるために形の上だけ就業規則を作成するというだけでは感心できることではありません。なぜでしょうか。

ここで考えていただきたいのが、そもそも就業規則とは何なのか、ということです。

会社は従業員を継続的に雇用し、就業させることによって組織として機能します。会社という組織にとって従業員はとても大切な存在であり、適切に管理する必要が生じます。従業員をコントロールできなくなれば、組織として機能しなくなります。そうならないために会社の基本的ルールを定めたものが就業規則なのです。この就業規則は、労働者とのトラブルを未然に防止するためにもなくてはならない大変重要なものです。

就業規則には、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定、計算及び支払の方法、退職に関する事項など必ず記載しなければならない事柄が決められています。しかし、これに限らず、就業規則に記載しておくべき事項は多岐にわたります。

労働者の権利意識が急速に高まっている昨今、ネットで知識を得たり、専門家に相談するなどして、自己の権利の正当性を主張する労働者が増え、就業規則をめぐるトラブル事例は年々増加しています。就業規則に記載のないことは守るべき対象になりませんし、規定内容に不備があれば、いくら会社が正当性を訴えたところで、そこをつかれます。就業規則は労働基準監督署による調査の対象ともなりますし、仮に労働者との間で労働審判や裁判になったとき、客観的資料として裁判所が重視します。

よって、就業規則の内容はできるだけ穴のない完璧に近い状態にしておく必要があるのです。

例えば、解雇の場面は労使間で争いになることが多いですが、就業規則において解雇の事由が明記されていなければ、解雇することも難しくなります。また、解雇理由を規定しているからといって安心はできません。不完全な就業規則のままでは何の意味ももたないのです。

一例を挙げれば、無断欠勤を続ける社員を解雇したいと思うのは会社としては当然でしょう。そこで、就業規則に、「○日以上無断欠勤した場合、解雇する」と規定していた場合どうでしょう。解雇は相手に対する意思表示ですので、相手に到達する必要があります。また、労働基準監督署で解雇予告をしなくても良いという認定を受けるためには、出勤の督促に応じないことが必要です。そういった手続が面倒な上に、その従業員が行方不明の場合はさらに厄介です(公示送達相手方を知ることができない場合や、相手方の住所・居所がわからない人、相手方が海外に住んでいてその文書の交付の証明が取れないときなどに、法的に送達したものとする手続きのこと。が必要となります)。解雇sできなければ、賃金を支払う義務は残りますし、保険料も払い続けなければなりません。

そこで、「○日以上無断欠勤が続いた場合、その従業員は自己都合による退職の意思表示をしたものとみなし、退職の手続を行う」と規定しておく必要があるわけです。

就業規則を作成する必要性は感じていただけたかと思いますが、実際、上記を含めトラブルを未然に防げるような完璧な就業規則を作るのは相当大変ですし、就業規則に付随して社内規定(例えば、給与規程、退職金規程、パートタイマー規程、育児・介護休業規程など)も整備しなければなりません。

労働関係諸法令は毎年のように改正され、関連通達主に行政機関内部において、上級機関が下級機関に対し、指揮監督関係に基づきその機関の所掌事務について示達するため発翰する一般的定めのことも頻繁に出されます。一方で、会社の実情も絶えず変化するものです。それらの変化に対応し、関連法令や判例などの専門的知識をもとに会社の実情にも対応した穴のない就業規則を作成しなければならないのです。

また、細かい部分も徹底して規定した完璧な就業規則を作りたいという要望もあれば、従業員が安心して仕事ができ、やる気が起こるようなものを作ることに重点を置いて作成したいという要望など会社のニーズも様々でしょう。

巷間にあるような就業規則のモデル書式を会社名だけ変えて作成するだけでは、その会社にあったきめ細やかな就業規則を作ることは到底不可能です。

そして、単に作成するだけではなく、労働基準監督署に届出が必要ですし、内容を従業員に周知させる必要があります。また、内容に基づいた確実で適切な運用も必要となります。

そうしたトータルの対応には専門的知識が必要不可欠です。就業規則についてのご相談は是非専門家である我々にお任せ下さい。

なお、上記以外にも、就業規則で規定しておくことで後々のトラブルが未然に防げることは沢山あります。このコーナーでも随時ご紹介していく予定です。

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