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社会保険労務

平成24年10月1日

2.従業員を雇用するとき必要なことは?

従業員を雇用するには、通常、まず従業員を募集し面接を経て採用を決定するというプロセスを経ると思います。採用募集あたっての注意点については別稿に譲るとして、ここでは、採用を決定した後、実際に雇用する際に必要な手続について概要を説明したいと思います。

1 労働契約の締結

まずは、従業員との間で労働契約を締結することが必要です。

その際、労働基準法により、労働者に対する明示が必要とされている事項は、

労働契約の期間に関する事項
就業の場所、従事すべき業務に関する事項
始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、就業時転換に関する事項
賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
退職に関する事項

など多岐にわたります(労働基準法15条)。

特に上に挙げた事項(但し④の昇給に関する事項は除く。)は明示した書面の交付までが義務付けられています(施行規則5条)。

労働契約自体は口頭でも成立します。しかし、上記のように明示あるいは書面の交付が義務づけられている事項もあります。それ以外の事項でも、後々のトラブルが生じる可能性があります。紛争予防のためにも、労働契約書を取り交わし、労働者にも署名押印させて労使それぞれ1通ずつ保管しておくことがベストです。少なくとも雇入通知書の交付は行うようにしましょう。

どういう条件で働くのかといった労働契約の重要部分がおろそかになっていると、後々言った言わないで揉める思わぬトラブルが起こり得ます。ですから、書面に残すことを惜しんではいけません。それは、たとえ身内や知人の紹介による採用であっても同様です。そして、書面の作成は慎重に行う必要があります。

また、必要があれば、身元保証契約を締結し、身元保証書を差し入れてもらうこともあります。身元保証契約とは、将来労働者が不正行為などで会社に損害を与えた場合に、身元保証人と連帯して賠償の責めを負うとする契約です。突然連絡が取れなくなったり、面接時点で知り得ない部分が後に発覚した場合に、身元保証人を通して対応できるというメリットもあります。この場合、「身元保証に関する法律」が定められているので、本法に従う必要があります。

2 労働保険の加入手続

労災保険と雇用保険を併せて労働保険といいます。

労災保険とは、労働者が仕事中や通勤途上で怪我や病気になった場合に必要な給付を受けられる保険のことです。雇用保険とは、労働者が失業した場合に給付を行うほか、就職活動の援助や教育訓練の費用の助成等を行う保険のことを指します。

まず、労災保険は、全ての従業員に適用されます。雇用時に特に手続は必要ありませんが、年1回、年間の賃金総額から保険料を計算し納付する必要があります。パートタイマーやアルバイトであっても同様です。

雇用保険については、雇用した従業員が、①週20時間以上勤務し、②月31日以上の雇用が見込まれる場合は、雇用保険の加入が必要となります。その場合、雇用した月の翌月10日までに、公共職業安定所(ハローワーク)へ届出が必要です。

(→ 労働保険について詳細はこちらをご覧下さい)

3 社会保険の加入手続

健康保険と厚生年金保険を併せて社会保険といいます。

健康保険とは、仕事中を原因としない病気や怪我、出産、死亡等について給付を行う保険のことで、厚生年金保険とは、老齢、障害、死亡等について給付を行う保険のことを指します。

法人であれば業種・人数に関係なく全てが、個人事業であっても常時5人以上従業員がいる場合は、強制的に社会保険の適用を受けます。個人事業で従業員が5人未満である場合や、サービス業の一部や農林漁業などの場合は任意適用となります。

また、パートタイマーやアルバイトの場合であっても、①雇用期間が2月以上である人や、②所定労働時間・労働日数ともに当該事業所の通常の労働者の概ね4分の3以上である場合は、社会保険の加入が必要です。

社会保険加入の手続は、雇用の日から5日以内に、所轄の社会保険事務所に届出が必要となります。

(→ 社会保険について詳細はこちらをご覧下さい)

雇用保険や社会保険の手続の際には、労働者に本人及び配偶者の年金手帳や、雇用保険被保険者証、前職がある場合にはその源泉徴収票などを用意してもらうことが必要な場合もありますので、その提出を求めなければならないこともあります。

以上、雇用した場合に行うべき主な手続について述べましたが、その他にも「労働者名簿」や「賃金台帳」を作成し、備え置く必要があります。

そして、出勤簿やタイムカードにより労働者の勤怠管理する体制の整備や給与計算及び年末調整をきっちりと行う体制を整備する必要があります。

また、正社員に限らず、パートタイマーを雇用する場合には別途考慮しなければならない点もありますし、高齢者を雇用する場合、外国人を雇用する場合などに特有の注意すべき点があります。その点も別稿でご紹介する予定です。

なお、雇用時に忘れてはならないのが利用できる様々な助成金です。これについてもまたこのコーナーで随時ご紹介致します。

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