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社会保険労務

平成26年11月1日

22.女性が快適に活躍できる職場作り(男女雇用機会均等法施行規則等の改正について)

男女雇用機会均等法の施行規則の改正、新指針の制定等が行われ、今年(平成26年)7月1日から施行されていることをご存じでしょうか。

今回は、その内容を簡単にご紹介します。改正等の主なポイントは以下の4点です。

 

(1)間接差別となるおそれがある措置の範囲の見直し

間接差別とは、表面的には性差別とは無関係でも、実際は性差別につながるような制度や措置のことをいいます。

従来は、指針により、

労働者の募集または採用にあたって、労働者の身長、体重または体力を要件とするもの
コース別雇用管理における総合職の労働者の募集または採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの
労働者の昇進にあたって、転勤の経験があることを要件とするもの

の3つの場合には、合理的な理由がないと間接差別にあたるとされていました。例えば、ⅰについて、荷物運搬業務について、必要な筋力があることを要件とする場合は良いのですが、当該業務であっても運搬するための設備や機械等を導入されていて通常の作業では筋力を要さない場合に、一定以上の筋力があることを要件とすることは認められない、などです。

今回の改正では、上記ⅱについて、①「総合職」の限定を削除し、②募集、採用だけでなく「昇進・職種の変更」が追加されました

この改正により、すべての労働者について、募集・採用、昇進・職種の変更の場面で、合理的理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることができなくなります。他の現場や地域で業務を経験することが能力の育成確保に必要であったり、処遇のためのポストを確保する必要があるなど組織運営上の理由が認められれば別ですが、広域にわたり展開する支店や支社がない場合や、あっても転勤の実態がほとんどない場合には、合理的理由が認められないとみなされてしまいます。

 

(2)性別による差別事例の追加

男女雇用機会均等法6条において禁止されている性別を理由とする差別に該当するものとして、「結婚していることを理由に職種の変更を行うこと」や「定年年齢の引き上げに際して既婚女性についてのみ異なる要件を設けること」が、性差別事例として追加されました。

 

(3)セクシュアルハラスメントの予防・事後対応の徹底など(セクハラ指針の改正)

今まではセクハラといえるか判断に迷うようなケースについて、今後は予防及び事後対応の徹底が求められます。具体的には、指針の改正により、以下のⅰ~ⅳが追加されました。

セクハラには、同性に対するものも含まれるものであることを明示。
性別の役割分担意識に基づく言動をなくしていく事が重要であることを明示。
放置すれば就業環境を害したり、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となったりしてセクハラが生じるおそれがある場合なども、セクハラ相談の対象に含まれる。
被害者に対する事後対応の例として、管理監督者または事業場内の産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調者への相談対応を追加。

今回の改正では、セクハラ発生のおそれがある場合やそもそもセクハラに該当するか微妙な場合でも相談対応が必要(ⅲ)となり、また、事後対応の徹底が強調されている(ⅳ)ことから、限界事例をもとにしたケーススタディや、管理監督者に対するメンタルヘルスのライン研修が必要になると考えられます。

中でも特筆すべきは、性別の役割分担意識(ジェンダーロール)に基づく言動をなくしていくことが重要であることが指摘されています(ⅱ)。セクハラやマタハラは、本人に悪気がなく、無意識のうちに刷り込まれた固定観念がそもそも原因となっていることがあるので、その自覚を促すための研修を行うことが必要となります。

 

(4)コース等別雇用管理についての指針の制定

従来からある局長通達「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」を、より明確に記述をした新しい指針「コース等で区分した雇用管理を行うにあたって事業主が留意すべき事項に関する指針」が制定されました。(指針の内容についての詳細はこちらをご覧下さい)

   

今回のこうした改正の趣旨は、雇用分野における男女格差の縮小や、女性の活躍促進にあります。女性の能力を十分に生かせる職場作りを行うことで、有用な労働力の確保、企業の戦力アップ、企業や社会の活性化を図ることが可能となることから、最近では、女性の活躍推進に取り組む「ポジティブ・アクション」という呼ばれる運動に積極的に取り組む企業も増えてきています。具体的な内容はこちらをご参照下さい。

そして、このような企業を支援するため、平成26年度からは、「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」が新設されました。この助成金は、女性管理職の育成を目的とした研修制度の実施等に対して支給されるものです。女性の活躍促進についての数値目標を公表し、一定の研修プログラムを実施することでその数値目標を達成した事業主に対して支給され、企業のイメージアップにも繋がるので、有用性の高い助成金だと思われます。助成額は、大企業の場合15万円で、中小企業の場合30万円です。こういった助成金を活用しながら、女性が快適に活躍できる職場作りを考えてみると良いのではないでしょうか。なお、助成金についての詳細はこちらをご覧下さい。

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