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社会保険労務

平成27年2月28日

23.マイナンバー制施行に向けた人事総務対策について①

平成25年5月24日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」をはじめとする関連4法案が成立し、「社会保障・税番号制度」(いわゆる「マイナンバー制度」)がスタートすることとなりました。

そしていよいよ今年(平成27年)の10月から皆様のもとにマイナンバーが通知され、来年(平成28年)1月からマイナンバーの利用が開始されます。まだまだ先のことだと思われるかもしれませんが、企業、特に人事・総務業務への影響はかなり大きく、今から対応を十分検討しておく必要があります。

マイナンバーとは

平成27年10月から住民登録しているすべての住民に「通知カード」が届き、その中で12桁の数字からなる「個人番号」が通知されます。この「個人番号」を通称「マイナンバー」と呼びます。なお、法人には13桁の数字からなる「法人番号」が通知されます。

「通知カード」には「個人番号カード」の申請書も同封されており、平成28年1月以降、市区町村に申請することで「個人番号カード」を発行してもらうことができるようになります。

そして、社会保障・税・災害対策といった行政分野で平成28年1月からマイナンバーの利用が開始されることになります。例えば、社会保障の分野だと「被保険者資格取得届」、「被扶養者届」、「傷病手当金支給申請書」など、税の分野だと「源泉徴収票」、「扶養控除(異動)申告書」、「報酬等に関する支払調書」といった書類にマイナンバーの記載が必要となるのです。

源泉徴収票を例にとると、右図のように、赤く囲んだ部分に個人番号や法人番号を記入する欄が新たに追加される予定です。

 

企業に与える影響

前で述べた税や社会保障の手続は企業が行う必要があるものが多数あるため、必要書類記入のため、事前にすべての従業員とその扶養親族からマイナンバーを取得し本人確認を行わなければなりません。この対応が不十分だと、当局に提出・報告すべき税務や社会保険手続に支障を来すことになります。

また、取得したマイナンバー情報の管理にあたってはその安全管理措置に厳しい法規制が及び、対応を疎かにすると罰則を受ける可能性があります。マイナンバーも個人情報の一種ですから、その情報を漏洩してしまうと会社に対する信頼すらも揺らぎかねません。今まで以上に企業として個人情報の管理能力が問われ、対応次第では大きなリスク要因になる可能性があるのです。

企業に求められる対策

(1)まず、今後の対策スケジュールを考える必要があります。

平成27年の年末調整業務については、仮に源泉徴収票の発行が平成28年になったとしてもマイナンバーの記載は必要とされていません。ですから、年末調整でマイナンバーの記入が必要となるのは平成28年の末頃と暫く先になります。しかし、定期的な社会保険手続に関しては夏前に手続を行う必要がありますし、新規採用者や退職者が出た場合はその時点で対応が必要となってきます。したがって、番号利用が開始される平成28年1月の時点では、番号の取得及び本人確認が完了していることが理想です。さらにいうと、平成27年の10月から通知カードの配布が始まるので、その重要性を理解してもらい紛失を防ぐ意味でも、夏頃には従業員に対してマイナンバー制度の概要と各種書類にマイナンバーが必要であることの周知徹底を図っておく必要があると思います。

(2)また、従業員からのマイナンバーの取得や情報管理には厳しい法規制が及びますので、従来の個人情報取得管理業務フローのままでは法律違反に該当してしまう可能性があります。特にマイナンバー取扱担当者にはその点を踏まえて改めて研修を行う等の配慮が必要です。

(3)マイナンバーを取得する際には、利用が想定される業務を予め明示しておくことが必要となります。マイナンバー取得時に業務内容を明示していないと、再度番号の取得と本人確認が必要となり煩雑ですので、マイナンバー制の対応が必要な手続や書類の洗い出し作業を十分に行い、具体的な手続を予め包括的に列挙して社内通知や就業規則に明記するといった方法で従業員から事前の同意を得ておくことをお勧めします。

全従業員からの取得及び本人確認となると人員も必要になり、場合によっては、外部要員の確保を検討する必要もあるでしょう。

(4)人事業務以外にも、例えば、講師への謝金や弁護士等に対する報酬などの支払調書にもマイナンバーの記載が求められるので、支払や契約の際にマイナンバーの取得と本人確認を行う必要が生じます。従業員だけでなく外部者からの個人情報取得についても経理担当者を含めて業務手順について再確認しておくといった対策が必要です。

 

以上、企業としてとるべき概括的な対策について述べましたが、今後、数回に分けて、①マイナンバーの取得及び本人確認、②講ずべき安全管理措置、③マイナンバーの提供、廃棄といった観点から特に注意すべき点や具体的な対応策をご紹介していきたいと思います。なお、企業の特定個人情報(マイナンバーやマイナンバーをその内容に含む個人情報)の適正な取扱についてはガイドラインというかたちで具体的な指針が出ていますので、ご参照下さい(「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」)。

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