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社会保険労務

平成27年4月30日

25.マイナンバー制施行に向けた人事総務対策について③

前回は、従業員からのマイナンバーの取得と本人確認を行う段階において概要と留意すべき点についてお話しました。

今回は、マイナンバーの利用や提供、廃棄の各段階について留意すべき点についてお話をさせていただきます。

利用及び提供

(1)マイナンバーの利用は、あらかじめ特定した利用目的の範囲内でのみ利用が可能です。例えば、マイナンバーを社員番号代わりに利用したり、顧客の情報管理のために利用するといったことは出来ません。本人の同意があったとしても利用目的を超えて特定個人情報を利用することは出来ません

事業者の場合、マイナンバーを利用できるのは、大きく「個人番号利用事務」「個人番号関係事務」の2つに分かれます。

「個人番号関係事務」とは、法令の規定に基づいて、従業員等のマイナンバーを書類に記載して行政機関等に提出する事務のことをいい、「個人番号利用事務」とは、主に行政機関等が、社会保障、税及び災害対策に関する特定の事務で、保有している個人情報の検索、管理のためにマイナンバーを利用する事務のことをいいます。つまり、健康保険組合等以外の大多数の事業者は、「個人番号関係事務」として利用することになります。

 

<健康保険組合の健康保険被保険者資格取得届の例>

利用目的を超える利用は、①金融機関が激甚災害時等に金銭の支払いを行う場合や、②人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、または本人の同意を得ることが困難な場合に限られます。

なお、利用目的範囲内であれば繰り返し利用することは可能です。例えば、前年の給与所得の源泉徴収票作成事務のために提供を受けたマイナンバーを、同一の雇用契約に基づいて発生する当年以降の源泉徴収表作成事務のために利用することができます。短期雇用契約が断続的に続く場合であっても、休職期間から復職する場合であっても同様です。

 

(2)限定的に定められた場合を除き、特定個人情報を提供することは出来ません。

なお、同一法人の内部等の法的な人格を超えない特定個人情報の移動は、マイナンバーの「利用」にあたりますが、社外への特定個人情報の移動は「提供」にあたります。つまり、出向や転籍などで給与支払者が変わる場合にマイナンバーを受け渡す場合は「提供」に該当することになります。

 

(3)個人番号関係事務を外部委託すること自体は可能です。委託者の許諾があれば、委託先がさらに再委託を行うことも可能です。但し、委託を受けた者に対する「必要かつ適切な監督」が必要となります。

「必要かつ適切な管理」とは、①委託先の適切な選定、②委託先に安全管理措置を遵守させるために必要な契約の締結、③委託先における特定個人情報の取扱状況の把握、の3点がガイドラインに規定されています。つまり、最低限、外部委託先との秘密保持契約等を締結しておく必要がありますし、委託先の設備、技術水準、従業員に対する監督や教育の環境等を十全に把握しておくことが必要です。

くれぐれも委託先への丸投げは厳禁であり、仮に委託先に必要な監督を講じないで特定個人情報の漏洩等が発生した場合、委託者自身が番号法違反と判断される可能性がありますので、注意が必要です。

廃棄手続

マイナンバーは、番号法で限定的に明記された事務を処理するために限り、収集または保管されることが許されるので、マイナンバーが記載された書類・帳票等の法定保存期限が到来した後は、速やかに廃棄または削除することが必要となります。例えば、扶養控除等申告書の場合、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年を経過する日までが法定保存期間となっています。下表のとおり、書類によって保存期間がバラバラ ですので、注意が必要です。

 

<書類の保存期間と起算日の例>

書類 保存期間 起算日
雇入れまたは退職に関する書類
(雇用契約書、解雇通知など)
3年 退職日
賃金台帳 3年 最後の記入日
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者特別控除申告書、源泉徴収簿 7年 属する年の翌年1月10日の翌日
被保険者資格取得等確認通知書(健保・厚年)標準報酬月額決定通知書 2年 退職日
被保険者資格取得等確認通知書(雇用保険) 4年 退職日
 

そこで、マイナンバーが記載された書類の保管や廃棄の手順やルールの見直しが必要です。各書類ごとに期日管理を行い、廃棄が必要な書類を明確化し、書類に保管年限を明記しておくなどといった対策が必要となります。特に、従業員の退職日が起算日になっている書類も多いですので、退職者について、退職日と各書類の保存期間末日を特定して記録しておくことが重要です。

廃棄の方法は、復元不可能な手段を使用する必要がありますので、焼却、溶解、シュレッダーといった手段を用います。機器や電子媒体の場合、専用のデータ削除ソフトや破壊が必要な場合もあるでしょう。

その上で、廃棄記録を保存しておくようにしましょう。記録する内容としては、特定個人情報ファイルの種類・名称、責任者・取扱部署、削除・廃棄状況などです。

なお、マイナンバーを削除すれば通常の個人情報として保管は可能になりますので、退職後も情報を保管・管理したいということであれば、マイナンバーにかかる部分だけを復元不可能な程度にマスキングまたは削除するといった対応が必要です。

 

以上、今回は、マイナンバーの利用・提供及び廃棄手続に関してお話をしました。次回は、マイナンバーの安全管理措置についてお話をさせていただく予定です。

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