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社会保険労務

令和元年6月13日

50.2019年度の助成金改正及び新設

平成31年度(令和元年度)も一部の助成金について改正や新設が行われました。

今回改正あるいは新設された助成金の中で注目すべきものをご紹介いたします。

キャリアアップ助成金

以前、キャリアアップ助成金のご紹介をいたしましたが、平成31年4月1日から、一部内容の拡充が行われました。

[助成金の概要]

この助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成されるものです。

平成30年度は以下のコースが用意されており、平成31年度もそのまま引き継がれています。

①正社員化コース

有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換または直接雇用した場合

②賃金規定等改定コース

有期契約労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定し、昇給させた場合

③健康診断制度コース

有期契約労働者等を対象とする法定外の健康診断制度を新たに規定・実施した場合

④賃金規定等共通化コース

有期契約労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用した場合

⑤諸手当制度共通化コース

有期契約労働者等と正規雇用労働者との共通の諸手当制度を新たに規定・適用した場合

⑥選択的適用拡大導入時処遇改善コース

労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置により、有期契約労働者等を新たに被保険者とし、当該有期契約労働者等の賃金引き上げを実施した場合

⑦短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者の週所定労働時間を延長すると同時に社会保険に加入させた場合

[拡充の内容]

上記⑦の短時間労働者労働時間延長コースについて、下表のとおり、1人あたりの支給額が増額されました。なお、令和2年3月31日までは、延長時間が5時間未満でも一定額以上昇給することで助成の対象となります。

週所定労働時間の延長時間 従前の支給額 拡充後の支給額
1時間以上2時間未満 38,000円(48,000円) 45,000円(57,000円)
2時間以上3時間未満 76,000円(96,000円) 90,000円(114,000円)
3時間以上4時間未満 114,000円(144,000円) 135,000円(170,000円)
4時間以上5時間未満 152,000円(192,000円) 180,000円(227,000>円)
5時間以上 190,000円(240,000円) 225,000円(284,000円)

なお、上記表の金額は中小企業の場合の支給額であり、( )内は生産性要件を満たした場合の金額です。生産性とは、付加価値(=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)を雇用保険被保険者数で除して計算したもので、その数値が、3年度前と比して6%以上伸びているか、1%以上伸びておりかつ金融機関から一定の事業性評価を得ている場合に生産性要件を満たすとされます。

また、支給申請上限人数が15人から45人に拡充されました。

 

本コースを活用すると、例えば、週所定労働時間数が20時間の従業員を25時間に延長し、新たに社会保険を適用すると、1人あたり22万5000円(生産性要件を満たせば28万4000円)の助成金を最大45人まで受給できることになります。

上記⑥の選択的適用拡大導入時処遇改善コースについて、下表のとおり、1人あたりの支給額が増額されました。

基本給の増額割合 従前の支給額 拡充後の支給額
3%以上5%未満 19,000円(24,000円) 29,000円(36,000円)
5%以上7%未満

38,000円(48,000円)

47,000円(60,000円)
7%以上10%未満 47,500円(60,000円) 66,000円(83,000円)
10%以上14%未満 76,000円(96,000円) 94,000円(119,000円)
14%以上 95,000円(120,000円) 132,000円(166,000円)

また、支給申請上限人数が30人から45人に拡充されました。

 

本コースを活用すると、例えば、社会保険の適用拡大の措置を実施することに加えて、有期契約労働者Aの時給1000円を1150円に、有期契約労働者Bの時給870円を1000円に増額するなど、有期契約労働者等全員の時給を14%以上増額した場合は、1人あたり13万2000円(生産性要件を満たせば16万6000円)の助成金を最大45人まで受給できることになります。

 

本助成金の詳細(支給要件等)については、こちらをご覧下さい。

人材確保等支援助成金

新たに「働き方改革支援コース」が新設されました。

 
[助成金の概要]

この助成金は、事業主等の雇用管理改善、生産性向上等の取組みによる助成を通じて、魅力ある職場を創出し、現在就業している従業員の職場定着の促進等を図ることを目的として

平成30年度は以下のコースが用意されていました。

①雇用管理制度助成コース

事業主が、新たに雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主のみ)の導入・実施を行い、雇用管理制度の適切な運用を経て従業員の離職率の低下が図られた場合

②介護福祉機器助成コース

介護事業主が、介護労働者の身体的負担を軽減するために、新たに介護福祉機器を導入し、適切な運用を行うことにより、労働環境の改善がみられた場合

③介護・保育労働者雇用管理制度助成コース

介護事業主または保育事業主が、介護労働者または保育労働者の職場への定着の促進に資する賃金制度の整備を行った場合

④中小企業団体助成コース

中小企業者を構成員とする事業協同組合等が、傘下の事業者の人材確保や従業員の職場定着を支援するために一定の事業を行った場合

⑤人事評価改善等助成コース

事業主が、生産性向上のための能力評価を含む人事評価制度と2%以上の賃金のアップを含む賃金制度を整備し、実施した場合

⑥設備改善等支援コース

生産性向上に資する設備等への投資を通じて生産性向上、雇用管理改善(賃金アップ等)を図る場合

これらの上記コースに加えて、⑦働き方改革支援コースが新たに加わりました。

[新設コースの概要]

働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に助成されるコースです。

助成を受けるためには、新たに労働者を雇い入れることや雇用管理改善の取組(人材配置の変更、労働者の負担軽減等)に係る雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。

支給される助成額は、「計画達成助成」と「目標達成助成」の2種類があります。

 

(支給額)

「計画達成助成」

雇い入れた労働者1人あたり 60万円

短時間労働者1人あたり 40万円

認定された雇用管理改善計画を1年間取り組んだ後、新たな労働者の雇い入れ、一定の雇用管理改善の達成等の要件を満たした場合に支給されるもので、支給対象労働者の上限は10名です。

 

「目標達成助成」

労働者1人あたり 15万円

短時間労働者1人あたり 10万円

雇用管理改善計画の開始日から3年経過する日以降に申請し、生産性要件を満たす(伸び率が6%以上の場合のみ)とともに、離職率の目標を達成した場合に支給されます。生産性要件については、上記「キャリアアップ助成金」に記載したとおりです。

 

なお、時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース、勤務間インターバル導入コース、職場意識改善コース)の支給を受けていることが必要となります。

本助成金の詳細(支給要件等)については、厚生労働省のHPをご覧下さい。

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