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社会保険労務

令和3年5月12日

65.テレワークにおける労務管理 ⑥

今回は、テレワークにおけるモニタリングについてお話しします。

テレワークにあたり、従業員に貸与しているPCの操作状況などを監視(モニタリング)したいと考える経営者の方も多いと思います。

テレワークの場合、タイムカードで出退勤を管理するわけにはいきませんが、自己申告のみでは労働時間の把握が困難な場合は、一定のモニタリングツールを利用することも考えられますし、監視の目が届かない自宅での勤務では、情報の不正利用などが行われる可能性も高くなりますので、操作状況のログをモニタリングすることで不正利用防止を図ることもできます。

但し、個人情報保護法に留意する必要があります。個人情報保護法でいう個人情報(同法2条1項)には従業員に関する情報も対象となり、各従業員を特定識別する情報と紐づけられる操作状況ログも個人情報に該当することになります。

個人情報保護委員会が策定する「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』及び『個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について』に関するQ&A」では、従業員を対象にビデオやオンライン等による監視(モニタリング)を実施する場合の留意点として、以下の4点を挙げています。個人情報保護委員会が策定する「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』及び『個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について』に関するQ&A」では、従業員を対象にビデオやオンライン等による監視(モニタリング)を実施する場合の留意点として、以下の4点を挙げています。

① モニタリングの目的をあらかじめ特定した上で、社内規程等に定め、従業者に明示すること

② モニタリングの実施に関する責任者及びその権限を定めること

③ あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し、その内容を運用者に徹底すること

④ モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に行われているか、確認を行うこと

まずは、労働組合等と十分な協議を行い、取り扱いに関する事項については周知することが必要です。その際のポイントは、モニタリングの目的を特定すること、当該目的以外には利用しないこと、取得した情報は必要最小限の従業員しかアクセスできないようにアクセス権限を管理することなどのルール作りを行い、そのルールに沿った運用が行われているかについても定期的に確認することが必要です。

モニタリングするための監視ツールも様々なものがあるようです。

確かに、モニタリングには、前で述べた労働時間の把握や情報の不正利用防止という観点では有効ですし、テレワーク下の従業員を監視することで緊張感が生まれ、業務に集中してもらえる効果や、会社としても適時に業務状況を把握することで情報共有を図り必要な指示を臨機応変に出しやすいというメリットがあります。

 

一方で、監視されているという状況は従業員にとって過度のストレスとなりかえってやる気を削いだり、信頼関係を損ね反発を生むといった原因にもなりかねません。また、従業員によっては、結果よりもプロセスを意識するようになり、かえって業務時間の長期化を招くおそれもあります。むしろテレワークにおいてはプロセスよりも成果を評価することが重要な面もあります。

上記のようなデメリットを考慮すると、モニタリングの導入には事前に慎重な検討が必要になります。そこで、次善の策として、各従業員に任せる業務内容を細かく決めることで業務範囲を明確に示すことも一つの方法です。従業員にとってなにをやるべきかが明確になれば効率的に業務を行うことが期待できますし、業務量を調整して範囲を明確にすることで長時間労働を防止することにもつながります。また、以前、できるだけテレワークを行う従業員が孤独に陥らないように、従業員同士のコミュニケーションをとる機会を設けるなどの配慮が必要だと述べましたが、従業員同士が連携を取り、業務を効率的に行うためにも、テキストチャットツールやWeb会議ツールを利用することで、従業員同士が連絡をとりあい、お互いの業務の遂行状況をチェックできる機会を増やすことも有効だと思われます。

 

なお、個人情報保護委員会では、クラウドサービスやテレワーク環境を利用する際の個人情報の漏えいに関する注意喚起がなされています。

また、情報セキュリティ対策に関して、総務省は、「テレワークセキュリティガイドライン」を作成し適宜更新しています。

今後は、それらの内容について少し掘り下げてご紹介したいと思います。

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