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社会保険労務

令和4年1月11日

71.育児休業給付金の改正について

以前、令和3年に一部改正された育児・介護休業法の内容についてご紹介しました(詳細はこちらをご覧ください)。あわせて雇用保険法も改正され、現行の育児休業給付金の内容が一部変更になり、また、新しく「出生時育児休業給付金」が創設されました。今回はそれらの内容をご紹介いたします。なお、施行はいずれも令和4年10月です。

 

育児休業給付金の変更

育児休業が分割取得できるようになったことにともない、育児休業給付金も、1歳未満の子について、原則2回の育児休業まで、育児休業給付金を受けられるようになります。なお、3回目以降は原則給付金を受けられませんが、以下の例外事由に該当する場合は、回数制限から除外されます。

[例外事由]

① 別の子の産前産後休業、育児休業、別の家族の介護休業が始まったことで育児休業が終了した場合で、新たな休業が対象の子または家族の死亡等で終了した場合

② 育児休業の申し出対象である1歳未満の子の養育を行う配偶者が、死亡、負傷等、婚姻の解消でその子と同居しないこととなった等の理由で、養育することができなくなった場合

③ 育児休業の申し出対象である1歳未満の子が、負傷、疾病等により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になった場合

④ 育児休業の申し出対象である1歳未満の子について、保育所等での保育利用を希望し、申し込み を行っているが、当面その実施が行われない場合

例えば、1回目の育児休業を取得した後に、子どもが負傷して世話を必要とする状態になった場合(上記例外事由③)に育児休業を取得したときは、2回目としてカウントされないので、さらにもう1度、1歳までの間に育児休業を取得することができます。

また、育児休業の延長事由があり、かつ、夫婦交代で育児休業を取得する場合は、1歳から1歳6か月と、1歳6か月から2歳の各期間において夫婦それぞれ1回に限り育児休業給付金を受けることができます。

 

出生時育児休業給付金

男性が子の出生後8週間以内に最大4週間まで休業できる制度として、出生時育児休業制度(通称「産後パパ育休」)が創設されたことにともない、新しく「出生時育児休業給付金」が創設されました。

 

(1)受給要件

出生時育児休業給付金を受給するための要件は、①休業開始日前の2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヵ月以上あること、②休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間以下)であることです。

①の雇用保険の被保険者であった期間とは、ひと月のうち賃金支払基礎日数、つまり就業日数が11日以上ある月をいいます。

②の最大日数(時間)は、28日間の休業を取得した場合なので、それより短い場合はその分比例して短くなります。

例:14日間の休業 → 最大5日(5日を超える場合は40時間)

10日間の休業 → 最大4日(4日を超える場合は28時間)

[10日×10/28=3.57→4日(1日未満の端数は切り上げ)]

なお、被保険者期間の確認や賃金日額の算定は、最初の育児休業取得時にのみ行われます。

(2)支給金額

ア 出生時育児休業は2回まで分割することができるので、出生時育児休業給付金も2回まで受給することができます。

その支給金額は、休業開始時の賃金日額×支給日数×67%で計算されます。

休業開始時の賃金日額とは、原則、育児休業開始前6か月間の賃金を180で除した金額です。手取り額ではなく総支給額であり、賞与は含まれません。また、支給日数は最大28日です。

イ 現行の育児休業給付金の支給額は、休業開始後180日までは賃金日額の67%が支給され、181日目以降は賃金日額の50%が支給されますが、この支給期間には出生時育児休業期間が通算されます。つまり、出生時育児休業を最大28日間取得した後に育児休業を取得した場合、賃金日額の67%の育児休業給付金が支給されるのは、152日間(180日-28日)となり、それ以降は賃金日額の50%しか支給されないことになります。

ところで、育児休業取得率が低い原因の1つに収入減があると思われますが、支給率が67%だから実収入もその分減少するかというと必ずしもそうではありません。賃金には基本給だけでなく通勤手当など各種手当や残業代も含まれますし、育児休業給付金は所得税の課税対象にならず、健康保険や年金といった社会保険料も免除されるからです。例えば、被扶養者が1人の方の場合、税込の月収50万円を前提に、源泉税や社会保険料等を差し引いた手取り額は約38万円になりますが、育休中だとそれが約33万円となりますので、手取額は概算で約5万円減少するだけです。そして、健康保険サービスや受給年金額にも影響はありません。

ウ 休業期間中に会社から賃金が支払われた場合は、会社から支給された賃金が、賃金日額の80%以上の場合には、出生時育児休業給付金は支給されません。

会社から支払われた賃金が賃金日額の80%未満である場合には、その賃金と給付金の額の合計が賃金日額の80%を超える場合には、その超える部分について給付金が減額されます。

つまり、「休業開始時賃金日額×休業日数」を「A」とした場合、会社から支払われた賃金額に応じて、下記のとおりとなります。

①13%以下の場合:A×67%を支給(全額支給)

②13%を超えて80%未満の場合:A×80%-会社から支払われた賃金額を支給(一部支給)

③80%以上の場合:支給されない(全額不支給)

(3)申請手続

出生時育児休業給付金の支給申請手続は、事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に申請書を提出することによって行います。申請書等はオンライン上でダウンロードして入手できますが、賃金台帳、労働者名簿など会社が用意すべき書類もありますので、従業員から休業の申出があった場合に対応できるように、会社は、申請書等を備えておきましょう。

申請期間は、出生日(出産予定日前に子が出生した場合にあっては当該出産予定日)の8週間後の翌日から起算して2か月後の月末までです。例えば、出生日が令和4年10月15日の場合、申請期限は令和5年の2月末までとなりますので、申請が遅れないよう注意しましょう。

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