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平成25年1月18日
本事案は、Bの妻が原告となって、本件処分の取り消しを求めた事例です。
まず、Bは中小企業主の代表者として特別加入しているところ、Bの死亡により遺族が労災保険給付を受けるためには、Bが「業務上死亡した」場合である必要があります(労働災害補償保険法34条1項2号
※条文:前条第一号又は第二号に掲げる者が業務上負傷し、若しくは疾病にかかつたとき、その負傷若しくは疾病についての療養のため当該事業に従事することができないとき、その負傷若しくは疾病が治つた場合において身体に障害が存するとき、又は業務上死亡したときは、労働基準法第七十五条 から第七十七条 まで、第七十九条及び第八十条に規定する災害補償の事由が生じたものとみなす。
なお、本事案は改正前の事例のため、平成12年改正前の同法28条1項2号)。
この点、「業務上死亡した」場合にあたるか否かについては、「業務遂行性」の判断が問題になります(中小企業主等の特別加入者についての判断基準の詳細はこちらをご覧下さい。
原審は、下見行為は営業活動の一環として行われたものであり、このような下見行為は従業員の業務とされておらず代表者の業務とされているため、「業務上死亡した」場合には該当しないと判断しました。
それに対し、本判決は、結論は原審と同じで本件処分の取り消しを認めなかったのですが、理由については原審と異なる判断をしました。
労災保険関係の成否は、労働者を使用する当該「事業」ごとに判断すべきである。
そして、「事業」とは、主として場所的な独立性を基準とし、その場所で一定の組織の下に行われる作業ごとに区分して捉えるべき。
そうすると、個々の建設等の現場における建築工事等の業務活動と、本店等の事務所を拠点とする営業、経営管理その他の業務活動は事業として別であると考えるべきところ、本件の事実関係のもとでは、前者の事業についてのみ労災保険関係が成立しているに過ぎない。
そして、本件事故は営業等業務活動に起因して発生したものであるので、そもそも労災保険給付の対象とならない。
本判決は、「業務遂行性」の問題ではなく、そもそも労災保険関係が成立しているか否かで判断しました。
特別加入の申請手続きにあたっては、下記のような申請書を提出するのですが、そこに「業務の具体的内容」を記載する箇所があります。
本事案では、その欄に「建築工事施工(8:00~17:00)」と記載されており、実際、従業員を個々の建築現場における事業にのみ従事させ、本店を拠点とする営業等の事業には従事させていなかったため、前者の事業についてのみ保険関係が成立したと言わざるを得ないと判断されたのです。
ということは、同種の事業であっても、現場業務とは別の場所で営業等の業務に従業員を従事させている場合は、その業務内容もきちんと申請書に記載しておかないと、後々労災保険給付が受けられないということになります。
特別加入制度自体は積極的に活用するべきですが、思わぬ落とし穴が待ち受けている場合もありますので、注意が必要です。
なお、特別加入制度については、こちらで概要をご説明していますのでご覧下さい。
平成22年(行ヒ)第273号 労働災害保証金不支給決定処分取消請求事件
平成24年2月24日 最高裁第二小法廷判決
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