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消費者問題

平成25年1月3日

2.企業のための消費者法 ‐消費者とは‐

前回ご紹介したとおり消費者法には様々なものがありますが、消費者法が適用されるためには、その法律関係に「消費者」が絡む必要があり、ここで「消費者」の定義が問題となります。

消費者契約法という法律の2条1項には、「この法律において、『消費者』とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいう」という規定がおかれ、また消費者安全法という法律の2条1項には、「この法律において、『消費者』とは個人(商業、工業、金融業その他の事業を行う場合におけるものを除く)をいう」という規定がおかれています。即ち、取引関係においては消費者契約法の、安全問題については消費者安全法の、それぞれの「消費者」の定義に合致したものが、その適用対象になるということです。

例えば、ある事業者がAさんの家に節電器を売りに来たとしましょう。これが自宅用電力の節電器ならば、特定商取引法の訪問販売にあたり、クーリング・オフなど消費者保護のための制度が利用できます。しかしAさんが経営するアパートの共用電力部分の節電器セールスの場合は、Aさんは消費者にあたりませんから、特定商取引法の適用が受けられないことになります。つまり、クーリング・オフが出来ないことになってしまうのです。

また、同じエレベータの人身事故であっても、それがホテルのロビーなどに設置されているもので、来客であるAさんに事故が起こったときは、消費者安全法が適用されて、消費者事故としての扱いを受け、消費者安全調査委員会(いわゆる消費者事故調)による調査対象となりますが、そのエレベータがホテルの奥にある従業員専用のもので、被害者Aさんがそのホテルの従業員であるときは、消費者事故とはいえないため、消費者事故調はこれを直接の調査対象とすることが出来ないということになってしまいます。

このように、同じような局面でありながら、「消費者」と言えるかどうかで違った取り扱いを受けるのは何やら釈然としないかもしれませんが、そこが消費者法の消費者法たるゆえんでもあると言えるのではないでしょうか。

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