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消費者問題

平成25年1月30日

3.企業のための消費者法 ‐費者法のなりたちとこれから‐

これまでの日本の政治は、経済発展を中心課題として、産業育成を国是としてきました。そのため、消費者問題については、法制面でも行政上でも、正面から取り組まれることがありませんでした。産業界を育成してゆくために、所轄官庁が法案を出し、執行してゆく訳ですが、他面で行き過ぎた商法を規制してゆかねば、その産業の健全な発展は望めません。つまりは産業育成のために、事業活動の受け手たる消費者被害を防いでゆく必要があったのであり、そのため消費者法は、産業育成(規制)立法であるいわゆる「業法」の中で、副次的な所産としてスタートし、いまでも色んな「業法」の寄せ集まりが、消費者法体系のほとんどを占めています。

ところで平成21年9月に、消費者庁消費者委員会が設置され、消費者行政は大きな転機を迎えました。これまで我が国には、産業界側の所轄官庁しかなく、業法の中で副次的に保護されてきたにすぎなかった消費者を、行政活動目的の主役として正面から取り上げ、消費者利益の擁護と推進を掲げる主務官庁が誕生したのです。このことは単に行政(法執行)面のみならず、立法面でも消費者のための法改正や新法制定が進んでゆくことを意味しています。これまでは行政官庁が消費者利益推進の観点から積極的に法律を検証してゆくということは、組織構成上なかったと言って良いでしょう。消費者庁と消費者委員会は、設立から3年半を経過したところですが、既に消費者利益推進の観点から、いくつかの法改正がなされ、また現在も改正へ向けて積極的に取り組まれている分野があり、さらには改正方向(消費者法の発展)を探るための情報収集や研究も行われています。

今後は、消費者利益に関わる業法の改正をはじめ、純粋な意味での消費者新法の制定が進んでゆくことが期待されます。

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