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消費者問題

平成25年5月24日

6.企業のための消費者法 ―広告規制③―

今回は、特定の業種業態(特定商取引)に向けられた広告規制についてご紹介します。

(1)通信販売の広告規制

郵便、電話、ファクシミリ、インターネットなどにより申込みを受け付けて、商品販売やサービスを提供する通信販売では、消費者が契約するか否かを判断するための情報は広告のみとなるため、通信販売で商品やサービスについて広告をするときは、広告に表示すべき事項について、以下のような規制(積極的規制と消極的規制)があります。

ア)広告に記載すべき事項(積極的規制)

下記事項については、広告に記載することが義務づけられています(特定商取引法11条規則8条9条10条)。

販売価格・送料その他消費者の負担する金銭(設置費や購入後のメンテナンス費用など)
代金等の支払時期及び方法
商品等の引渡時期
契約申込みの撤回または契約解除に関する事項
業者の氏名・名称、住所、電話番号
業者が法人であってホームページ等で広告するときは代表者または業務責任者の氏名
申込みに有効期限があるときはその期限
商品に隠れた瑕疵がある場合の業者の責任について定めがあるときはその定め
コンピュータソフトをダウンロードの方法によって販売するときは、そのソフトに必要なコンピュータ動作環境等の条件
販売数量の制限や販売に条件があるときはその内容
電子メール広告をするときは業者のメールアドレス
 

なお、広告スペースとの関係で、消費者の請求によって別に書面や電子データを送ることを表示した場合には一部の表示を省略することができますが、そのための送料を消費者に負担させる場合にはその金額を表示しなければなりません。

広告に上記の事項を記載しなかった場合は、主務大臣による指示や業務停止命令等の行政処分の対象になります(特商法14条15条)。更にその指示や命令に違反した場合は、罰則が設けられています(同法70条の2同法70条の272条2号)。

また、私法上の効力として、④の表示がない場合には、消費者は商品等の引渡を受けた日から8日間は申込みを撤回または契約を解除して返品をすることができます。

 

イ)広告に記載してはならない事項(誇大広告の禁止-消極的規制)

下記の事項について、著しく事実と相違する表示をしたり、実際のものよりも著しく優良又は有利であると人を誤信させるような表示をすることは禁止されています(特商法12条規則11条

商品等の種類・性能・品質・効能・効果
商品等の販売条件、申込みの撤回、契約の解除に関する事項
商品等や業者、その事業について、国や地方公共団体、通信販売協会、その他著名な人や団体が関与していること(「○○省推薦」「○○大臣認可」「○○教授監修」など)
商品の原産地、製造地、商標、製造者名
ア)に記載した必要的表示事項
 

上記の禁止に違反して、誇大な広告をしたときは、ア)と同様に主務大臣による指示や業務停止命令等の行政処分の対象になります(特商法14条15条)。

更にその指示や命令に違反した場合は、罰則が設けられているほか(同法70条の272条2号)、行政処分が無くても直接に罰則が科されることもあります(同法72条3号)。

 

行政側で誇大広告か否かの判断をするために性能試験や諸検査を行っていては迅速かつ適正な行政処分が困難となる一方、業者側としては広告に表示する以上は裏付けとなるデータや資料を持っているはずですので、主務大臣は誇大広告禁止に違反した疑いのある業者に対して、期間を定めて(原則15日以内)、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提示を求めることができ、もし業者がその期間内に資料を提示しないときは、その広告を誇大広告にあたるものと見なすことになります(特商法12条の2)。

従って、この提出要求を受けたにも拘わらず、業者が期間内に合理的な資料を提示出来なかったときは、指示や業務医停止命令等の行政処分がなされることになります。

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