トップページ  >  連載  >  消費者問題13

消費者問題

平成27年2月23日

13.企業のための消費者法 ―電話勧誘拒否(Do-Not-Call)登録制度―

皆さんは、電話によって商品販売の勧誘を受けたことがありますか。そのとき、断りづらい思いをしたり、買ってしまってから後悔したりしたことはありませんか。

私たちは、必要な商品については、自らお店に出向いたり、またインターネットなどを通じて、購入します。これは自分で必要性を感じて、「買いに行く」という消費行動ですが、電話勧誘販売や、電話を端緒とした訪問販売などは、こちらが必要性を感じる前に、先方から「売りに来る」ものです。しかも、電話はこちらの状態(忙しいとか、体調が優れないとか)を考慮せずに、架けられてきますし、その場での対応を迫られるので、契約に歪みが生じて消費者被害が起こりやすく、生活の平穏への侵害や、時間の浪費も生じさせるなどの弊害が指摘されています。

 

日本では、事業者が電話によって消費者を契約に至らせる商法を、電話勧誘販売と規定して、事業者に一定の制約を課し、消費者を保護していますが、電話勧誘じたいを禁じるのは、商品先物や金融商品などの販売においてだけです。しかし近時は、怪しげな投資詐欺など、高齢者の消費者被害が急増し、そのほとんどが、電話による勧誘を端緒として発生しています。あまり意に添ぐわない健康食品の送りつけなども電話勧誘を端緒としています。これらの被害に遭わないために、近頃は、迷惑電話をチェックする器械などが開発されたり、また知らない番号の電話には出ないという自主防衛策が講じられています。

 

でも、そのような器械を買ったり、煩わしい自主防衛策などを講じなくとも、「最初から商品勧誘と分かっておれば、そんな電話には出たくない」という消費者の気持ちは、法制度上も保護されて良いのではないでしょうか。

そんな消費者の期待に応えて生まれたのが、電話勧誘拒否(Do-Not-Call)登録制度です。これは、電話による営業勧誘を受けたくない消費者が、自分の電話番号を登録し、電話勧誘しようとする事業者は、予め自分の営業先である消費者が、その登録簿に電話番号を登録していないかどうかを確かめて、登録されていない場合にしか電話勧誘してはならないという義務を課すものです。

この制度は、現在、欧米の先進諸国はもとより、中南米、アジアでも逐次導入され、世界的な広がりを見せています。お隣の韓国でも昨年からこの制度が実施されました。

 

日本は、先進国であり、経済大国といわれています。そして電話勧誘による消費者被害も従来から多発し、問題の指摘がなされています。このような状況下で未だ電話勧誘拒否(Do-Not-Call)登録制度が導入されていないことは、いかにも出遅れの感があります。しかも高齢者の被害が激増し、もう待ったなしといえるのではないでしょうか。この様な情勢を受けて、消費者庁でも、外国のDo-Not-Call制度の調査に踏み出しました。

この制度が立ち上がれば、電話による営業勧誘を受けたくない人は、登録さえしておけば、まともな事業者からは勧誘電話を受けずにすみますし、仮に業者から電話が架かってきても、登録を無視してあえて電話してくる者を「悪質業者」と捉え、そこから先の勧誘を堂々と断ることができます。その意味で、Do-Not-Call制度は、詐欺業者からも消費者を守るものになりえるのです。

事業者の皆さまは、近い将来、日本でもこの制度が創設されうることを念頭において、営業方針を立てていただくことが肝要かと思います。

top