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消費者問題

平成27年4月30日

14.企業のための消費者法 ―勧誘拒否表明の制度化(不招請勧誘規制強化)へ―

前回は、電話勧誘拒否(Do-Not-Call)登録制度のお話を書きましたが、これは電話による勧誘を拒絶することを予め登録することによって、招請しない電話勧誘を禁止する制度であるところ、同趣旨のものとして、訪問販売等を拒絶することを予め表示することによって、招請しない訪問勧誘を禁止する制度(Do-Not-Knock)もあり、多くの自治体の消費生活センターでは、訪問販売お断りステッカーを作って、市民に配布しています。このステッカーの法的効果については、不当な勧誘を禁じる消費者保護条例を持っている自治体では、違反業者に対して、条例レベルでの違法を問える余地がありますが、制裁規定が十分用意されておらず、実効性に疑問があると指摘されていました。

 

これらDo-Not-CallとDo-Not-Knockは、共に不招請勧誘(顧客の要請がないのに勧誘すること)を規制するものであり、近時多発している高齢消費者の被害対策としては、予め拒絶の意思を表明(電話番号登録・ステッカー貼付)しておくだけで、訪問や電話という勧誘段階の入口で、業者をシャットアウトできるし、これを破って(法規制を無視して)勧誘してくる者に対しては、悪質業者とみなして対処しうるので、かなりの効果が見込めるものと考えられます。

前回は、消費者庁がこのD0-Not-Call制度の調査に入ったことをお話ししましたが、4月24日の日刊紙(共同通信)で、同庁がさらにDo-Not-Knockも加えて、特定商取引法の改正に乗り出す方針であることが新聞報道されました。

 

この動きを察知した関係業界からは、早くも「営業の自由」(憲法22条に規定する「職業選択の自由」に由来)を盾とした反対意見が出ているようであり、販売拡張員に読者の訪問開拓をさせている新聞業界(宅配日刊紙)も反対の急先鋒と言われています。政府内にも規制に慎重な意見があるようです。

普段は、弱者を保護するための先進的で合理的な法改正に対しては、好意的な論調を示す新聞ですが、いざ自分の利害が絡む問題となると、業者としての牙を顕わにしています。しかし、予め嫌だといって、拒絶の意思を明示している人に対して、顧客の拒絶表明を無視してまで、業者が営業活動をする自由があるというのでしょうか。そのような営業の自由まで保障することが憲法上要請されているのでしょうか。私としては、この問題に対する大新聞の姿勢に対して、大いに疑問を感じています。

 

実際に、高齢者の消費者被害として、数種の新聞が家の中に読まれないまま溜まっている例がよく報告されています。これは自分では断れない高齢消費者の状況につけ込んで、何紙もの販売拡張員が不要な契約をさせている実例です。この様なケースでは、電話勧誘拒否登録制度を創設し、訪問販売お断りシールに法律上の意味(効果)を持たせることによって、これらを破って電話勧誘・訪問勧誘した業者に、行政上の処分や刑事制裁を課すことができれば、被害はかなり防止できるのではないでしょうか。皆さまはどうお考えでしょう。

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