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消費者問題

平成30年4月7日

25.事業者のための消費者問題 ―つけ込み勧誘と消費者契約法改正問題―

つけ込み勧誘とは

事業者が消費者の判断力不足につけ込んで勧誘し、消費者にとって不本意な契約をさせることを「つけ込み勧誘」といい、そのような契約は取消し出来るように法律を改正する動きがあります。ここでつけ込まれそうな消費者のターゲットは、社会経験の乏しい「若年者」と、加齢により判断力が低下した「高齢者」が想定されていました。

 

検討の背景

このような法改正が検討されたのは、若年者については成年年齢の引下げ(20歳から18歳に)、高齢者については昨今の被害の激増を受けての問題意識によります。

現在の若年者被害は20歳が最も多いのですが、これは20歳が成年とされており、20歳未満の者の契約は未成年取消ができるため事業者が未成年者に勧誘をしないからです。逆に言えば、20歳になった途端、 取引相手になりうるので、成人のうち最も社会経験の乏しい20歳の若 者に最も被害者が多くなっています。従って、成年年齢を18歳に引き 下げれば、それだけ取引相手層が広がる訳ですから、18歳と19歳の若年者被害が増加することは目に見えています。

高齢者の被害についても、日本社会の高齢化は今後ますます進みますから、高齢者人口が増大して、今でも多い高齢者被害が被害者層の拡大により更に増えることも容易に予想されます。

 

改正の動きは?

そこで、「若年者」と「高齢者」という判断力が不足しがちな人たちへのつけ込み勧誘対応が問題となっており、双方への手当の必要性は改正を担当する消費者庁も認めているのですが、同庁が先頃提示した改正案の中身には、「社会生活上の経験不足の不当な利用」が要件に挙げられ、その状況を利用した①不安をあおる告知や、②恋愛感情等に乗じた人間関係の利用を、取消しうる勧誘行為の対象としており、これが与党の法案審査を通過して閣議決定されました。

この「社会生活上の経験不足の不当な利用」を文言通り解釈すれば、 若年者被害への対策にはなっても、高齢者被害は対象にならないのでは ないかという懸念を持つのは、私だけではないでしょう。消費者庁は、高齢者でも経験していない事象に対してはこの法文が適用できると弁明しているようですが、これが成年年齢引き下げを意識して挿入された文言であることは明らかです。果たして、このままで高齢者被害に対応しうるのか、これから始まる国会での議論や、法解釈をめぐる論争の深まりが待たれるところです。

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