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消費者問題

令和元年8月6日

26.事業者のための消費者問題 ―消費者契約法 新法施行―

はじめに

改正消費者契約法が今年の6月に施行されました。不当勧誘による取消し対象の追加と、不当な契約条項の無効対象の追加が重要です。

不当勧誘については、いわゆる困惑類型(消費者契約法4条3項)に、新たに「つけ込み型」と「心理的負担型」のパターンが取消対象として加わりました。

消費者が困惑状況から逃れるために契約に至った場合、これまでは不退去(1号.帰ってほしいと言ったのに帰ってくれない)と、退去妨害(2号.帰らせてほしいと言ったのに帰らせてくれない)で契約を取り消すことができました。

これに当該消費者の状況(高齢・若年・恋愛・不安など)につけ込まれた場合(3~6号)と、契約前の債務内容の実施(7号)や、契約前に実施した行為の損失補償請求(8号)によって心理的圧迫を受けて契約してしまった場合にも、取消すことが出来るように改正されたものです。

 

つけこみ型不当勧誘

(1) 3号は、社会生活上の経験が乏しいことから進学、就職、結婚等の社会生活上の重要な事項等に対する願望の実現に過大な不安を抱く消費者に、その事情を知りながらその不安をあおる告知をして、契約の目的となるものが当該願望の実現に必要である旨を告げることです。例えば、無料の就職セミナーに参加して、「このままだと貴方は一生成功しない」などと不安をあおられて有料講座に勧誘された場合がこれにあたります。

(2) 4号は、消費者が勧誘者に対して恋愛感情等の好意の感情を抱いており、その消費者が勧誘者も自分に対して好意を抱いていると誤信している状況を利用して、その消費者に対して、当該契約をしなければ恋愛関係等が破綻する旨を告げることです。例えば、SNSで知り合った男性に私生活上の悩みを打ち明けたところ、「これから頑張ってゆくのに形に残るものを買ってはどうか」と真珠の3点セットを勧められ、迷っていると、「僕のことが信用できないんだね。もう会うのは止めようか。」と言われて、断れば縁が切れると思い契約してしまったような場合です。

(3) 5号は、加齢等によって判断力が低下していることから、生計や健康その他事項に関して現在の生活の維持に過大な不安を抱いている消費者に対して、その不安をあおって契約しなければ、現在の生活の維持が困難となる旨を告げることです。例えば、骨や関節に異常がないのに仲間の膝痛に合わせて、同じように膝が痛いという高齢者に対して、「これを飲まなければいずれ歩けなくなってしまう。」と告げて、高価な健康食品を購入させるような場合が考えられます。

(4) 6号は、霊感等によって不安をあおり、契約すればその不利益を回避することが出来る旨を告げることです。例えば、「貴方には悪霊が取り憑いているが、この壺を買って百日間、花を活ければ悪霊は退散する。」と言われたようなケースです。

心理的負担型の契約取消と不当条項による無効については、また次回ご説明いたします。

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