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消費者問題

令和元年10月6日

27.事業者のための消費者問題 ―消費者契約法 新法施行2―

前回のつづき

新法では、困惑類型に「つけ込み型」と「心理的負担型」のパターンが新たに取消対象として加わりましたが、前回はつけ込み型の不当勧誘について述べましたので、今回は、心理的負担型である「契約前の債務内容の実施(7号)」や、「契約前に実施した行為の損失補償請求(8号)」によって、心理的圧迫を受けて契約してしまった場合の取消しについて述べてゆきます。

 

心理的負担型の不当勧誘

(1) 7号は、「契約前の債務内容の実施」であり、消費者が契約の申込または承諾をする前に、事業者が契約を締結したならば負うこととなる義務を先に実施してしまい、実施前の状態に戻すことが困難である状況で、消費者が困惑して契約をした場合です。

例えば、ガソリンを入れるためにスタンドに立ち寄ったところ、店員がボンネットを開けて「エンジンオイルが少ない・・・」と言いながら、勝手にエンジンオイルを入れ始めたので、時間がないと断ったものの強引にオイル交換して、代金を請求されたので応じてしまった場合などがこれに当たります。

(2) 8号は、「契約前に実施した行為の損失補填請求」であり、消費者が契約の申込または承諾をする前に、事業者が調査や情報の提供、物品の調達等、契約の締結を目指した事業活動を行い、それが消費者のために特に実施したものであることや、その事業活動により生じた損失の補償を請求する旨を告げることです。但し、それが消費者からの特別の求めに応じたものであったり、取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合は除かれます。

例えば、業者から何度も電話がかかってきたので、仕方なくファミリーレストランで会ったところ、CO2排出権取引の話をされたので、興味がないと断ろうとしたところ、「わざわざ時間をとってやって来たのに契約しないのは営業妨害だ」と詰られ、怖くなって契約してしまったような場合がこれに当たります。

 

次回への橋渡し

新法では、これまで説明した「取り消すことができる不当条項(困惑 類型)の追加」の他に、「無効とされる不当条項」も2種類新設されました。次回はそれらについて説明いたします。

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