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相続

平成26年3月28日

2.相続税対策のための養子

相続税の計算上、相続財産のうち、「5000万円+1000万円×法定相続人数」は非課税です(註:平成27年1月1日の相続からは、金額がそれぞれこの6割に減額されます)。つまり相続人が増えると非課税額が増えるわけです。

例えば、親(A)、子(B)、孫(C)がいるとして、親(A)が1億円の財産を残して死亡した場合、Bのみが相続人なら6000万円が非課税で、残る4000万円について相続税がかかります。しかし、AがCを養子にしていれば、7000万円まで非課税なので、相続税は3000万円に対する相続税で済みます。相続税は、財産額が増えると多額な部分ほど税率も上がるという構造を持っており、3000万円を超えて5000万円までの部分の税率は20%です。3000万円と4000万円の差額1000万円につき200万円の納税の要否の問題になりますから、節税できるものならそうしたいということにもなります。

また、CがAの養子でなければ、AからBに1億円が相続され、B死亡の際にその1億円がCに相続されるという構造になり、二度相続税を支払わねばならないことになります。しかし、CがAの養子で、例えば、AからB,Cに各5000万円ずつが相続されますと、B死亡の段階でCがBから相続するのは非課税限度内の5000万円で済むという節税効果も生じます(これは、B固有の資産がなく、Aから引き継いだ財産が全て残っているという前提での計算ですが、Bに固有の資産があり、その額が相続税の支払等により減少した額に近い場合には似たような結論になります。)。いわゆる「孫養子」と呼ばれるものです。

 

Bが一人っ子なら、あまり問題は生じません。しかし、Bに兄弟姉妹がいる場合や、特にその兄弟姉妹にもそれぞれ子がいる場合、孫の中でもBの子だけと養子縁組を行うことは紛争を生みかねません。相続人が増えれば一人当たりの相続分は減りますし、孫の中でも不平等だという感覚が生じかねないからです。

そして、一旦「争族化」が生じてしまうと、遺産分割協議は前に進みません。また、どのような結論になっても、一旦壊れてしまった人間関係は、元には戻りません。

 

確かに、節税効果はあくまで養子縁組を行った「効果」であり、養子縁組を行う理由はそれぞれです。相続の際に揉めるだろうなとは思っても養子縁組をしなければならない事情がある場合もあります。しかし、少なくとも、節税効果だけを目的に、やみくもに養子縁組を行うことは避けるべきです。「節税目的を含んだ養子縁組」を考えるのであれば、その養子さんが取得する遺産も含め、他の相続人全員の納得の上ですること基本です。

 

しかし、問題が生じる時点で、当のご本人はこの世にいません。また、ある時点で関係者から養子縁組の理解を得られたとしても、時が経てば、事情も人の考えも変わることがあります。その場合に備えて遺言を残すべきでしょう。遺言で養子さんの取得分を記載しておけば、他の相続人も反対はできません。ただ、遺言自体が紛争を呼んでしまうこともあります。遺言書の項でご説明申し上げたいと考えます。

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