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相続

令和元年7月14日

38.改正相続法が施行されました

2018年7月に成立した民法第五編(相続法)は、その大部分が本年7月1日に施行されました。既に、自筆証書遺言書の方式緩和措置は、本年1月13日に施行されています。また、配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等については2020年4月1日に、自筆証書遺言の保管制度については同年7月10日に施行される予定です。

今回の改正は、①生存配偶者の居住権の保護、②遺産分割等に関する見直し、③遺言制度に関する見直し、④遺留分制度に関する見直し、⑤相続の効力等の見直し、⑥相続人以外の者の貢献の考慮と、その対象とする内容は、非常に広範囲に及んでいます。

(1) 生存配偶者の保護として、所有権と切り離した建物居住権という法定の債権が新設された。これにより生存配偶者が従前通りの居住を継続するための新たな選択肢が生まれました。

(2) 遺産分割については、従来、分割時に現存する遺産のみが対象とされ、第三者に譲渡されるなどして相続財産から逸出した財産は対象とされませんでした(それはそれで個別に解決しなければなりませんでした。)。改正法では、分割時に逸失した財産でも遺産分割手続に組み入れる方法を認めました。また、他方で遺産の一部の分割を可能にしました。これらの改正により、当事者の意思によって遺産分割の財産の範囲を定めることができるようになりました。

(3) 自筆証書遺言書は、従来は全文を自筆で書かなければなりませんでしたが、改正法では相続財産の全部または一部を手書きせずとも目録を添付することが認められました。これにより、不動産登記情報を添付することも可能になり、随分と省力化できるようになりました。また、国による保管制度の創設により自筆証書遺言の利用促進を目指します。

(4) 遺留分については、遺留分権者の権利を金銭債権とすることで、対象財産(物そのもの)を受遺者等が確実に取得できるようにし、遺留分により遺言者の意思の実現が妨げられないようにしました。

(5) 不動産などで法定相続分を超える持ち分を取得した相続人について、その旨の登記をしなければ相続の効力を第三者に対抗できないとして、相続の効力を制限し、相続財産の権利と、取引関係に入った第三者の取引の安全との調和を図りました。

(6) 相続人でなくても、無償で被相続人の療養看護などに尽くした人(例えば、長男の妻)も、その貢献を金銭に評価して相続人に対して請求する制度が認められました。

 このように、今回の改正は、単に家族内での遺産の分け方にとどまらず、ひろく被相続人の権利義務を相続人が承継することの社会的意義付けを組みなおしたと評価されるものであり、取引社会においても重要な改正であるといえます。

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