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税制知っ得

平成26年9月19日

3.赤字になった場合は、確定申告を!

今回は、確定申告義務者でない方についても、確定申告すればお得なことがあるよ、というお話です。

個人事業を営んでいる人、1年間の給与が2000万円を超える人、2箇所以上の会社から給与をもらっている人、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える人等、一定の人には確定申告の義務があります。(所得税法第120条1項

第120条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第2章第4節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第87条第2項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第89条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるときは、第123条第1項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第3期(その年の翌年2月16日から3月15日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額並びに第2章第4節の規定による雑損控除その他の控除の額並びに課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額又は純損失の金額
第90条第1項(変動所得及び臨時所得の平均課税の規定の適用を受ける場合には、その年分の変動所得の金額及び臨時所得の金額並びに同条第3項に規定する平均課税対象金額
第1号に掲げる課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第3章(税額の計算)の規定を適用して計算した所得税の額
前号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合には、その控除しきれなかつた金額
第1号に掲げる総所得金額若しくは退職所得金額又は純損失の金額の計算の基礎となつた各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額(当該所得税の額のうちに、第127条第1項から第3項まで(年の中途で出国をする場合の確定申告)の規定による申告書を提出したことにより、又は当該申告書に係る所得税につき更正若しくは決定を受けたことにより還付される金額その他政令で定める金額がある場合には、当該金額を控除した金額。以下この項において「源泉徴収税額」という。)がある場合には、第3号に掲げる所得税の額からその源泉徴収税額を控除した金額
前号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた源泉徴収税額がある場合には、その控除しきれなかつた金額
その年分の予納税額がある場合には、第3号に掲げる所得税の額(源泉徴収税額がある場合には、第5号に掲げる金額)から当該予納税額を控除した金額
前号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合には、その控除しきれなかつた金額
第1号に掲げる総所得金額の計算の基礎となつた各種所得の金額のうちに譲渡所得の金額、一時所得の金額、雑所得の金額、雑所得に該当しない変動所得の金額又は雑所得に該当しない臨時所得の金額がある場合には、これらの金額及び一時所得、雑所得又は雑所得に該当しない臨時所得について源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額
その年において特別農業所得者である場合には、その旨
十一
第1号から第9号までに掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項

所得税法第121条1項

第121条 その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第28条第1項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が2千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第1項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。
一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第183条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第190条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額という。)が20万円以下であるとき。
2以上の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第183条又は第190条の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、イ又はロに該当するとき。
第195条第1項(従たる給与についての扶養控除等申告書)に規定する従たる給与等の支払者から支払を受けるその年分の給与所得に係る給与等の金額とその年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円以下であるとき。
イに該当する場合を除き、その年分の給与所得に係る給与等の金額が150万円と社会保険料控除のがく、小規模企業共済等掛金控除の額、生命保険料控除の額、地震保険料控除の額、障害者控除の額、寡婦(寡夫)控除の額、勤労学生控除の額、配偶者控除の額、配偶者特別控除の額及び扶養控除の額との合計額以下で、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき。

義務者以外は確定申告をする必要はありませんが、任意に確定申告をすると、お得な場合があります。その一つとして、年間で損失が出ている場合があります。それが、確定損失申告の制度です(所得税法第123条1項)。

第123条 居住者は、次の各号のいずれかに該当する場合において、その年の翌年以後において第70条第1項若しくは第2項(純損失の繰越控除)若しくは第71条第1項(雑損失の繰越控除)の規定の適用を受け、又は第142条第2項(純損失の繰戻しによる還付)の規定による還付を受けようとするときは、第3期において、税務署長に対し、次項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
その年において生じた純損失の金額がある場合
その年において生じた雑損失の金額がその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をこえる場合
その年の前年以前3年内の各年において生じた純損失の金額及び雑損失の金額(第70条第1項若しくは第2項又は第71条第1項の規定により前年以前において控除されたもの及び第142条第2項の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。次項第2号において同じ。)の合計額が、これらの金額を控除しないで計算した場合のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をこえる場合

これは、各種所得金額の損益を通算した結果、純損失が生じた場合や、雑損失の金額が、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額を超える場合に、純損失や雑損失の金額を翌年以降3年間にわたり繰り越すことができる、という制度です。

少し難しいので、非常に簡単な事例で説明します。

事業者Aさんの、その年の売上は100万円、仕入等の経費が200万円で、100万円の赤字だったとします。

翌年、Aさんは頑張って売り上げを伸ばし、経費200万円で、300万円の売上をあげました。この場合、所得は100万円になりますね。Aさんは、今年これだけ儲けたのだから、その分所得税を支払わなければならないはずなのですが、前年に生じている100万円の損失で、本年の100万円の利益を相殺することができるのです。そうすると、本年の所得はゼロになりますね。したがって、Aさんは所得税を払う必要がなくなります。

自分は事業主じゃないから関係ないや、とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、株式を購入しておられる方は要チェックです。株式の損失も繰り越すことができますからね。

つまり、非常に大まかな説明ですが、赤字が出た場合には、確定申告をすれば、翌年以降の節税になる可能性があるのです。

とはいえ、赤字が少ない場合は、微々たる節税にしかなりませんし、一方で、確定申告をすること自体に結構な時間を費やします。損失申告するかどうかは、費用対効果も考えて決めましょう。

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