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税制知っ得

平成24年12月27日

9.養子縁組で相続税対策を

知人・友人から、おじいちゃんと養子縁組をしているという話を聞いて、なぜ?と思ったことはありませんか。理由はいろいろ考えられますが、その一つに相続税対策があります。

相続税の額は以下のように計算されます(相続税法15条1項、16条)。

課税価格の合計額-基礎控除(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)=課税遺産総額

課税標準 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
3億円以下 40% 1,700万円
3億円超 50% 4,700万円

例えば、

〇被相続人:父(死亡)

〇相続人:母、長女、長女の夫(婿養子)

〇課税価格:5億

という条件で、長女の夫が父と養子縁組をしていた場合としなかった場合で、相続税額を比較してみましょう。

相続税の額は次のように計算されます。

上記の課税遺産総額を、法定相続分に従って取得したと仮定して、各法定相続人の取得金額を算出する。
①の各人の相続財産の価格に、金額に応じた税率を乗じ、控除額を差し引く。
②の相続人全員の合計額を算出する。
③の合計額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振り、さらに地位に応じた控除があれば差し引く。
【養子縁組をしなかった場合】相続税合計額:1億8,550万円【養子縁組をした場合】相続税合計額:1億6650万円   

養子縁組をした場合としなかった場合とでは、相続税合計額で1,900万円の差額が出ます。

その他にも養子縁組をすることのメリットとしては、以下のような点が考えられます。

 

①生命保険の死亡保険金、死亡退職金の非課税限度額の拡大(相続税法12条1項5号6号

いずれも、500万円×法定相続人の数で算出されます。養子縁組をすれば、その数×500万円につき、非課税の枠が拡大されるというわけです。

②登録免許税の軽減、不動産取得税の免除(登録免許税法別表1地方税法73条の7第1号

登録免許税は、不動産の取得原因によって税率が異なります。相続の場合は、税率が0.4%ですが、売買や贈与になると2%ですから、大きな違いです。また、不動産取得税は、相続による場合は課されません。

③一世代飛ばし

孫と養子縁組をすることで、本来2段階で課されるはずの相続税が、1回で済みます。

 

このようにメリットの多い養子縁組ですが、無制限に認めていては、相続税の負担が不当に減少してしまうので、「法定相続人の数」に制限があります(相続税法15条2項)。

〇被相続人に実子がある場合又は被相続人に実子がなく養子の数が1人の場合 1人まで

〇被相続人に実子がなく、養子の数が2人以上の場合 2人まで

これはあくまでも、相続税制上の制限であり、民法上は養子縁組は無制限に行うことが可能です。

 

他方、養子縁組にはデメリットもあります。

例えば、養子は、養親の名字を名乗ることになりますから、名字が変わる可能性があります。また、孫との養子縁組をする場合、孫にかかる相続税は、1.2倍になりますから、よく検討すべきでしょう。さらに、養子には実子と同等の法律上の権利が与えられますから、相続人間で争いが起こり、「争族」となる危険性があります。影響を受ける相続人の理解を得て行う必要があります。

 

なお、相続税は平成27年から改正が予定されていましたが、先送りになっています。改正の主な内容としては、基礎控除の引き下げ(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)や、最高税率を55%に上げる等といったものでした。先送りとなっただけで、改正自体は近いうちになされるでしょうから、しっかり相続税対策をしていく必要はあります。

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