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税制知っ得

平成25年1月10日

10.税制は「内縁の妻」に厳しい

最近は、様々な理由から、「事実婚」というスタイルを採用する夫婦も珍しくありません。

「事実婚」とは、事実上夫婦として社会生活を送っているが、婚姻届を提出してない状態を指します。事実婚による妻のことを、一般的に「内縁の妻」と呼びます。

「内縁の妻」は、社会保険制度と税制では扱われ方が大きく異なります。

社会保険制度

収入が一定の基準以下の場合、夫の扶養に入れるのであれば、入った方がお得です。厚生年金保険や健康保険は、原則として、年間の収入が130万円未満であれば、扶養に入ることができます。

厚生年金保険については、配偶者は3号被保険者になることができます(国民年金法7条1項3号)。そして、この配偶者には、内縁の妻が含まれることが明記されています(同5条8項)。

また、健康保険については、被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び弟妹が被扶養者になることができ、この配偶者にも内縁の妻が含まれることが明記されています(健康保険法3条7項)。

条文を見ても分かるとおり、いずれも、「被保険者(の収入)により生計を維持するもの」という要件が入っており、金銭的に被保険者に依存しているかどうかで判断しているため、社会生活の実態が重視されるわけです。

税制

これに対し、税制は「内縁の妻」には非常に厳しいです。

例えば、所得税には配偶者控除(所得税法83条)という制度がありますが、これには内縁の妻は含まれません(所得税基本通達2-46)。もちろん、扶養控除(所得税法84条)の対象にもなりません。これらが指す「配偶者」や「親族」は、民法の規定による法律上の「配偶者」及び「親族」であることが必要とされているのです。

ちなみに、内縁の妻との間に生まれた子については、養子縁組をしない限り法律上の親族関係は発生しませんから、やはり扶養控除の対象とすることはできません。

内縁の妻が、遺贈(民法964条)、死因贈与(民法554条)、特別縁故者の申立て(民法958条の3、遺贈とみなされる。相続税法4条)等により財産を取得した場合も、当然、相続税は課税されますが、配偶者控除(相続税法19条の2)は認められません。一方で、内縁の妻は、相続税額が2割増しとなるのです(相続税法18条)。

また、内縁の妻が不動産について遺贈を受けた場合、登録免許税の税率は2%となっており、相続人に対する遺贈の場合の税率が0.4%であるのに対し、かなり高い税率となっております(登録免許税法別表第1、1(2)ハ、同第17条)。

また、不動産取得税についても、相続人に対する遺贈であれば、非課税なのですが(地方税法73条の7第1号)、内縁の妻に対しては課税されます

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