平成27年1月30日
平成27年1月1日から相続人に厳しくなった改正相続税法が施行されています。課税が厳しくなれば、これを回避しようとする動きがあるのも道理、色々な節税方法の話題が新聞、雑誌、記事、広告をにぎわせています。今回は、このようなトレンドに因み、日常礼拝のために用いられる非課税となる相続財産についての話題です。
相続税法では、「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」の財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない、と規定されています(相続税法12条1項)。しかし、どのような施設・設備が、「墓所、霊びょう及び祭具」や「これらに準ずるもの」に該当するのかについては、相続税法等の関係法令には特に定められていません。そこで、通達がその解釈を補充しています。
(「墓所、霊びょう」の意義)
(祭具等の範囲)
(相続税法基本通達より)
答えは、上の12-1に明示してありますように、祠の敷地に相続税はかかりません。
ところが、祠の敷地も非課税財産であると扱われるようになったのは、平成24年の課税処分取消訴訟の判決後からです。それまでは上が非課税でも、下の土地の部分には課税されてきたのです。この扱い変更の契機になった訴訟では、相続人が祠の敷地を非課税財産であるとして更正の請求をしたものの、税務署がこれを認めなかったため、処分取消訴訟を提起しました。相続した財産の中にある弁財天及び稲荷を祀った祠の敷地部分も非課税財産に当たるかが争われ、祠と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象になるとして、その敷地も非課税財産であるとされたのです。この判決後、国税庁は、土地も非課税の対象にも含まれると(行政)解釈を変更し、通達で「土地」の部分も明示されるようになりました。
現実に、自宅の敷地内に祠がある方は、そう多くはないでしょう。その意味で、私にはそんなの関係ない、というのが普通の市民感覚でしょう。しかし、このケースで注意していただきたいのは、税務署長の解釈、すなわち通達による課税処分は絶対ではない、後の司法審査で覆される運命にあった、行政解釈であるにすぎない(通達の意味については、こちらをご参照ください。)、ということもあるということです。
そして、このように課税庁の取扱が変更される際には通知が出されます。このように課税庁の解釈の変更により納税すべき額が変更された場合、訴訟で課税処分の取消を求めなかった納税者でも、すでに納税した相続税の法定申告期限が通知の日から遡ること5年以内であり、かつ、この取扱の変更を知った日から2か月以内であれば更正の請求ができます(国税通則法23条2項3号、国税通則法施行令6条1項5号)。
東京地裁平成24年6月21日判決(確定)
top