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税制知っ得

平成27年4月30日

29.なぜマイナンバーは保護されるのか?

企業は、これから、主に雇用する従業員等からマイナンバーを聞き出し、これを税務・社会保険関係の書類に記載し、税務署、社会保険事務所等に提出する任務を負わされることになります。これに伴う対策については、社会保険労務のコーナーにて、「マイナンバー制施行に向けた人事総務対策について」と題して、連載しているところです。ご案内の内容の中心は、企業が、マイナンバーの管理について、厳格な責任を負わされるようになりますところ、これへの対処方法、手続です。

 

ところで、自社(自分)の番号を申告、申請等に記載するのならまだしも、企業の経理担当の方などは、既に法定調書を作成させらるだけではなく、おまけに他人の番号の管理を厳罰付きで負わされ、何とも厄介な苦役とも思われませんでしょうか。

 

私たちの所有する自動車のナンバー(自動車登録番号)は公示された状態で道路を走っています。私たちの所有する土地や建物の登記情報は誰でも閲覧できます。これに対し、マイナンバーは、単なる12ケタの番号に過ぎません、それ自身は無機質で財産でも何でもありません。にもかかわらずどうして厳格な管理責任、言い換えれば、そこまでして、たかが12ケタの数字を第三者に知られないように保護するのでしょうか?

 

その答えは、価値がある個人のプライバシー情報だからです。

なぜ価値があるかといえば、この12ケタを手掛かりに、価値のある情報を取得できるようになるからです。国民一人一人に対して、それぞれ異なる12ケタの番号が与えられます。そして、コンピュータシステムの中で、この12ケタに又はこの番号と一対一対応になる番号と個人に関する情報が連結されます(以下、これを「データベース」といいます)。

個人に関する情報は、企業のマーケティング、債権管理等の上、有用なものであり、それ自体価値があります。企業が欲しい情報です。

他方で、個人に関する情報は、個人が人として幸福な社会生活を営んでいく上で、ますますその重要度を増してきています。個人が出したくない又は支配すべき情報です。

 

例えば、

12ケタ:1234256789012と個人の属性に関する情報が連結される場合(A)

 

12ケタとこれと一対一対応をなすAB1234567890が連結される場合(L)

 

AB1234567890と所得税情報が連結される場合(B)

 

この仕組みからわかるように、1234256789012を手掛かりに、個人の属性に関する情報が分かるようになります。

そして、1234256789011∞AB1234567890との一対一対応関係を手掛かりに、個人の所得に関する情報が分かるようになります。

 

実は、Aの個人の属性に関する情報は、既に施行されている住民基本台帳ネットワークシステムでデータベースとして管理されています。

そして、Bの所得税情報は、マイナンバー(厳密には、マイナンバーと一対一で対応する別の番号など、以下同義で用います。)を利用しデータベース化されます。

 

当初の利用は、マイナンバーをデータの識別手段として所得等税や社会保険に関するデータベースを作ることに限られています。これは、行政の分野です。

 

しかし、将来的には、民間の分野にも拡張することが想定されています。例えば、診療情報、調剤情報等のデータベースを作り、自宅のコンピュータのディスプレイを通して、患者の閲覧に供することなど。

 

このようにして、税務データベース、社会保険データベースに加えて、診療情報等データベースなど民間のデータベースが加わり、やがて行政・民間の分野の各次元で、マイナンバーを介して、データの集積が行われていくことが予想されます。

 

マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)には、勿体をつけた言葉で第1条に立法趣旨が書いてあります。要は、IT化の流れで、行政を効率化させることです。裏腹に、コンピュータに蓄積されたデータは紙ベースである場合に比べて、格段に漏えいのリスクがあり、また、その誘因も高いことは周知のとおりです。そこで、マイナンバーを取扱うことになる企業に対して、厳しい管理者責任を規定したわけです。 

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