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税制知っ得

平成30年1月12日

43.仮想通貨と課税関係

仮想通貨元年

昨年4月、資金決済に関する法律の改正法(以下「改正資金決済法」といいます。)が施行され、同年12月には、について、16社の仮想通貨交換業者(仮想通貨と法定通貨の交換などを業とする者)が登録されました。仮想通貨は1,000種類以上あるといわれていますが、昨年、その代表格であるビットコインは取引量が急増しました。2008年、始めて発行され、2017年初め、1ビットコインは1,000ドル弱だったのが、11月、1万ドルを超え、12月には、2万ドルを超えました。ビットコインなどの仮想通貨は、国家権力によって発行・管理される従来の法定通貨ではありません。もともと、プログラマーが作った暗号化された情報の塊の連鎖です。それが、ウォレット(電子的な財布)を介して、授受されます。なぜ取引されるのか、それは多くの人々に信用されているからです。では、信用の源泉は何でしょうか。それは、ブロックチェーン技術などによる高いセキュリティ、低い手数料、手続の簡便性により送金に利用されてきたことと思われます。それが、オンラインショッピングに始まりリアルの店舗での支払い手段になり、ついに、決済手段として国家が承認し、監督に乗り出したのです。そして、投機の対象になりました。

飛躍的に存在感を増している仮想通貨は、何かと便利そうです。しかし、今のビットコインのボラティリティーを目にして、直ぐに利用することには躊躇を覚えます。ブームが落ち着いたときに使ってみることにしても、その準備として、仮想通貨利用者の立場から、法定通貨の法的性格、業法上の規制、会計上の扱い、税法上の扱いについて、関連付けて、整理しておきたいと思います。

 

仮想通貨の法的性格

財産的価値のあるものであって、
電子的に記録され、移転できる、
不特定の者に対して、代金の支払等に使用できるもののうち、
法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード、預金、債券等)ではないもの(改正資金決済法2条5項)。
 

つまり、改正資金決済法は、仮装通貨を支払手段として位置付けたということです。

 

業法上の規制

仮想通貨交換業者に対し、改正資金決済法は、①登録、②預託された金銭や仮想通貨について分別管理、③利用者に対する説明義務等を課すことなどより、利用者の利益を保護するとともに、犯罪収益移転防止法は、④口座開設時の本人確認、本人確認記録および取引記録の作成・保存義務等を課すことで、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与の防止を図っています。また、これらを担保するために、金融庁・財務局には、交換業者に対する、報告徴求・立入検査、業務停止等の権限が付与されました。

会計上の扱い

企業会計基準委員会(ASBJ)は、資金決済法を受け、平成29年12月、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」を公表しました(平成30年4月1日以降開始する事業年度から適用。)。

 

仮想通貨利用者(仮想通貨交換業者以外の者です。)は、以下のような会計処理をすることとしています。

売却損益

仮想通貨の売買の合意が成立した時点において、仮想通貨の売却損益(売価-簿価)を認識

期末処理

①活発な市場が存在する場合

市場価格に基づく価額をもっての貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理。

②活発な市場が存在しない場合

取得原価をもって貸借対照表価額。ただし、期末における処分見込価額が取得原価を下回る場合には、処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価とその処分見込価額との差額を当期の損失として処理。

税法上の扱い  

消費税法及び所得税法上の扱いは、法令改正や通知により、それなりに明らかにされましたが、法人税法上の扱いは、既存の制度のうち、どこにどのようにはめ込むかまだ釈然としないところがあります。

 

消費税

支払手段に類するものとして非課税(消費税法6条、消費税法施行令9条4項)(但し、原則として、平成29年7月1日より前に譲渡されたものについては、課税対象。)

所得税

仮想通貨を売却または使用することにより生じる利益は、原則として、雑所得(但し、事業所得等の各種所得の基となる行為に付随して生じる場合は、事業所得等。)(所得税法27条、35条、36条)。(詳しくは、こちらへ。)

法人税法

売却損益については、上記4の会計基準により損益を認識。但し、売買代金の支払の手段として仮装通貨を利用した場合には、その時の市場価格と簿価との差額が損益として認識されると解される(法人税法22条)。
評価損(期末の処理)については、棚卸資産として位置付けるか、短期売買商品として位置付けるか、有価証券に準じて扱うか、等により、損益の認識が異なるところ、通達による基準の明確化が求められる。

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