平成30年2月9日
本年に行われる税制改正のもととなる税制改正大綱が昨年末公表されました。うち、平成30年4月1日から施行される見込みのもので、中小企業にとって特に注目すべき改正のベスト5をピックアップしてみました。
事業承継税制の特例の創設
従来より、事業承継の際の非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度がありました。
しかし、その適用のための要件(入口)が厳しく、適用継続のための要件(出口)も厳しく、その利用があまり進んでいませんでした。
そこで、抜本的な拡充がされました。それが、特例制度です。従来の制度と併存します。
①将来の重課税のリスクの軽減
後継者が売却・廃業を行った際、その時点での株価を基に納税額を計算し、減免可 能になります。以前は、承継時の株式の評価額を基に計算されていたので、廃業も、売却も困難でした。
承継後5年間で平均8割以上の雇用を満たせなくても、猶予可能になります。以前は、その時点で猶予がなくなり納税しなければなりませんでした。
②事業承継の適用の容易化
全株式について猶予の対象になります。以前は、3分の2まででした。
事業承継に係る全部の贈与税・相続税が猶予されます。以前は、80%まででした。
複数の株主から複数への後継者への株式の移転も適用されます。以前は、一対一の承継だけでした。
その他事業承継者にとって、有利な改正がなされます。
中小企業における所得拡大促進税制の拡充
従来より、平成24年度の給与等支給総額より3%以上増大させることを前提に、前年度より給与等の支給が改善した場合、税額控除が認められていました。
一方で、平成24年度に対する増大要件がなくなり、他方で、前年度比1.5%以上の増加が要件になります。
そして、前年度比2.5%以上増加した場合は、より大きな税額控除(増加額の15%→25%)を受けることもできるようになります。
機械・装置等の固定資産税の減免措置の創設
生産性の向上を図るため、生産・販売活動のための機械・装置等に投資を行った場合、毎年の固定資産税が、3年間、最大で0円になります(但し、条例による)。
ただし、地方税の申告に先立ち、市町村の承認を得るとともに、労働生産性が3%以上向上する必要があります。
雇用促進税制の拡充
従来より、雇用保険の一般被保険者の数を増加させたことに対し、税額控除(40万円×頭数)をしていました。
従来、5人以上増加することが要件でしたが、2人以上になりました(但し、有期雇用又はパートタイムである新規雇用者を除いた数、また、前年比10%以上)。
なお、適用年度開始後2か月以内(3月決算の会社の場合、6月末まで)に、雇用促進計画の届出を行うことが前提です。
再編・統合等に係る税負担の軽減措置の創設
後継者が不在のため事業承継が行えない企業について、M&Aによる事業の継続を促進するため、不動産の登録免許税と取得税が軽減されます。
ただし、組織再編実施に先立ち、経営力向上計画を関係官署に提出する必要があります。
なお、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づく税制措置(10%税額控除等)、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(後二者はいずれも7%税額控除等)、研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)(税額控除最大40%)などの税制も、同じく、平成30年度中は有効で、役に立つ制度なので、攻めの経営を行う上で、是非とも有効に活用したい制度です。
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