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税制知っ得

平成30年5月16日

47.外国人を雇用した場合、源泉所得税の徴収はどうなるか?

はじめに

景気が回復する一方で、生産年齢人口の減少に伴い、有効求人倍率は飛躍的に改善しました。他方、企業における新規雇用の難しさが取り沙汰されています。それを埋め合わせてくれているのが外国人労働者です。

外国人労働者(仮に、新たに外国から来た労働者と定義します。)に戦力になってもらえることは助かりますが、普通に日本人を雇用する場合と異なり、企業から見て、源泉所得税の徴収義務の内容が変わってきます。なぜなら、所得税法は、日本における居住形態に応じ課税要件を定めたり、所得税法が外国人労働者の居住国との租税条約により修正されたりしていることなどがあるからです。

そこで、外国人を雇用する場合に源泉徴収する場合のチェックポイントを説明します。

 

3つのチェックポイント

外国人労働者の居住形態は何か?
国内を源泉にした所得を得ているか?
外国人の本国との租税条約により課税要件や税率が修正されていないか?

外国人労働者の居住形態は何か?

そこで、外国人を雇用する場合に源泉徴収する場合のチェックポイントを説明します。

居住形態の下位区分は、日本に結びつきの強いものから、永住者、非永住者、非居住者に分けられ、前二者が一括りで居住者と呼ばれます。一般に日本人の雇用者は、永住者です。これに対し、外国人労働者は、この3区分のいずれにも当たり得ますし、居住期間、日本国籍の有無等により、区分が変わってきますのでフォローが必要です。特に、1年が節目になります

住所の有無 居所を有する期間 居住者・非居住者の区分 日本国籍の有無 過去10年のうち住所又は居所を有していた期間の合計 居住形態
住所あり   居住者   永住者
5年超
5年以下 非永住者
住所なし 引続き1年以上   永住者
5年超
5年以下 非永住者
1年未満 非居住者   非居住者

 

国内を源泉にした所得を得ているか?

居住形態を特定した後、国内源泉所得(国内での事業から生ずる所得、国内にある資産の運用、保有若しくは譲渡による所得、その他その源泉が国内にある所得(所得税法161条~163条))か否かを見極めます。日本との結びつきが強いほど、課税範囲が広くなります。

居住形態 国内源泉所得 国外源泉所得
国内で支払又は国外から送金 国外で支払かつ国外に送金
永住者 課税
非永住者 課税  
非居住者 課税  

よって、外国人が日本国内で勤労したことによる所得については、居住形態にかかわらず、原則、所得税が課税されます(所得税法5条、28条、5条2項1号、164条1項2号、復興財確法8条1項)。企業は、源泉徴収義務を負います(183条1項、212条1項、復興財確法8条2項)。そして、居住者であれば、扶養控除等申告書に基づき計算され、非居住者であれば、一律、20.42%となります(185条、213条1l項、復興財確法13条)。

外国人の本国(国籍のある国)との租税条約により課税要件や税率が修正されていないか?

外国人の本国と日本との間に租税条約が締結されていないか、確認し、租税条約がある場合、課税要件や税率が修正されていないか、確認します。租税条約の有無は、こちらをご覧ください。

 

例えば、以下のような例があります。

① 居住形態の認定(両国間の振り分け)、

② 所得の源泉地の修正

③ 適用税率の修正

   

国内法の税率の方が租税条約上の限度税率(条約で定めた国内の最大の税率)よりも高い時は、復興特別所得税を源泉徴収しない(復興財確法33条9項1号)。

短期滞在者の免税(12か月を通じて合計183日を超えないことなど)

学生、事業修習者等の免税(アジアの人々に対しては優遇される傾向、個別に租税条約で確認)

 

租税条約に基づき、免除又は軽減を受けようとするときは、所定の事項を記載した届出書をその国内源泉所得の源泉徴収義務者を経由して税務署に提出しなければなりません。

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