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税制知っ得

令和3年1月11日

53.令和3年度中小企業のための税制改正

本年に行われる税制改正のもととなる税制改正大綱が昨年末公表されました。うち、中小企業にとって特に注目すべき改正点をピックアップしてみました。これから徐々に細かな要件が明らかになっていくので、留意しておきましょう。

「新たな日常」に向けた企業の経営改革を実現する投資促進

(1) カーボンニュートラル実現に向けた投資促進

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業の脱炭素化投資を加速するため、①脱炭素化効果が高い製品(新型リチウムイオン電池やパワー半導体など)の生産設備や、②生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立させた設備(風力発電設備など)の導入に、最大10%の税額控除等

 

(2) DX(デジタルトランスフォーメーション)投資の促進

デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を促進するため、全社レベルのDX計画に基づく、クラウド技術を活用したハード・ソフトのデジタル関連投資(AIによる配車システム、おもてなしAIチャットアプリなど)に、最大5%の税額控除等

 

(3)研究開発投資の底上げと企業のDXを促進する研究開発の推進

① コロナ禍の厳しい経営状況の中(売上2%以上減)、研究開発投資を増加させる企業に対する税額控除の上限引き上げ(25%→30%)

② DX促進のため、クラウド提供型のソフトウェアに関する研究開発(効率的な物流網構築AIソフト、与信審査AIソフトなど)の対象追加等を講じた上で2年間延長

 

(4)企業の機動的な事業再構築を促すための株式を対価とするM&Aの円滑化

株式を対価としたM&Aを行う際、対象会社株主の株式譲渡益への課税の繰延措置を、事前認定不要な恒久措置として創設(総額の20%まで現金の活用も可能)

 

(5)人材確保等を促進する税制

新規雇用者(新卒・中途採用)の給与等支給総額を前年度より2%以上増加させた場合、その給与等支給総額の15%を税額控除(教育訓練費20%以上増加で、さらに5%上乗せ)

   

コロナ禍から立ち上がる中小企業の成長支援・地域経済の活性化

(1)中小企業の経営資源の集約化(M&A)に資する税制の創設

M&Aによる規模拡大を通じた中小企業の生産性向上と、増加する廃業に伴う地域の経営資源の散逸の回避の双方を実現するため、経営資源の集約化を促進する税制の創設

① M&A実施後のリスクに備える5年間の据置期間付の準備金による減税

② 最大10%の税額控除等の設備投資減税

③ 給与等支給総額を前年度より2.5%以上増加させた場合、その増加額の最大25%を税額控除

 

(2)様々な中小企業の設備投資支援を強化

① 中小企業の生産性向上や、DXに資する設備投資(効率的な物流網構築AIソフト、与信審査AIソフトなど)を後押しすべく、中小企業経営強化税制を2年間延長(10%の税額控除等)、中小企業投資促進税制を商業・サービス業・農林水産業活性化税制と統合した上で2年間延長(7%の税額控除等)

② 地域経済を牽引する企業向けの地域未来投資促進税制(5%の税額控除等)に、新たにサプライチェーン強靱化(海外から国内での製品生産への移行)の類型を追加し、2年間延長

③ 激甚化する災害や感染症の事前対策に資する中小企業防災・減災投資促進税制(特別償却20%)の対象設備(停電時の電力供給装置、重要設備のかさ上げに用いる架台、サーモグラフィなど)を追加し、2年間延長

 

(3)雇用者の所得拡大を支援

企業全体の給与等支給総額を増加させた場合(前年度比1.5%以上)、その増加額の15%を税額控除(2.5%以上増加等で、さらに10%上乗せ)する制度とした上で、2年間延長

電子帳簿等保存制度の見直し(令和4年1月1日から施行)

(1) 帳簿の電子的保存

① 事前承認の廃止

(新)税務署長による事前承認制度の廃止

←(旧)備付開始日等の3か月前の日までに、所轄税務署長に承認申請書を提出

② 保存要件の緩和

(新)現行の帳簿(厳しい真実性確保と可視性確保要件を満たすもの)と新設の帳簿(閲覧できればいい)も認める

←(旧)現行の厳しい要件を満たした帳簿のみ

③ 検索機能の確保要件の簡素化

(新)検索項目の数、範囲指定、組合せの要件の大幅な簡素化

←(旧)主要な記録事項指定かつ範囲指定かつ組合せによる検索可能要件

 

(2) 証憑の電子的保存(スキャナー保存)

① 事前承認の廃止

(新)税務署長による事前承認制度の廃止

←(旧)備付開始日等の3か月前の日までに、所轄税務署長に承認申請書を提出

② 保存要件の緩和

(新)タイムスタンプの付与期限延長と代替措置の容認、原本と電子的データの定期検査の廃止等

←(旧)厳しい改ざん防止のための要件を満たしたスキャンデータのみ

③ 検索機能の確保要件の簡素化

(新)検索項目の数、範囲指定、組合せの要件の大幅な簡素化

←(旧)主要な記録事項指定かつ範囲指定かつ組合せによる検索可能要件

 

(3) 電子取引に係るデータ(電子メールで受領した請求書、領収書等(PDFファイルなど))保存

上記(2)②③と同様

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