平成24年10月25日
私は、弁護士登録以来、いわゆる消費者問題を取り組む課題の一つとしています。大阪弁護士会で所属した委員会も消費者保護委員会ですし、弁護団や研究会でも消費者事件を扱うところで活動して参りました。
今では、個人の投資被害、特に相手方たる専門企業の説明不足や断定的判断の提供などによる投資金の損失を消費者問題として扱うことに異論は見られなくなりましたが、私が登録をした20数年前までは、投資というものには相場による損益がつきものであり、投資家が余裕資金の運用を自己の責任と判断で行うものであるから消費者問題とは言えないという論調もありました。しかし、自己責任の前提には、きちんとした商品情報の提供や、投資家による冷静な判断が尽くされていることが必要であり、馴染みのない高リスク商品をきちんと説明せずに勧めたり、必ず相場は上昇するというような言辞を用いるなどして、個人投資家の判断を誤らせた場合には、自己責任の前提を欠くことになります。そのような強引な勧誘は従来から行われていたと思われますが、高度経済成長による右肩上がりの時代には損失が発生しなかったので、問題が顕在化することはありませんでした。
昭和の終わり頃、日本経済は隆盛を極めジャパン・マネーが世界を席巻し、世間では「財テク」などいう言葉が流行り、家庭でも「証券貯蓄」などと呼ばれて、それまで投資とは縁の無かった主婦や高齢者が個人投資家の仲間入りをしました。ところが平成に入ってまもなくに、いわゆるバブル経済の崩壊が起こり、投資対象とされていた株式をはじめとする証券類や土地などが暴落して、投資家に損失が発生する事態になりました。そこで投資被害問題がクローズアップされるに至ったのでした。
このようなことから投資家が弁護士の門を叩くようになったのですが、私が弁護士になった頃は、先のバブル経済がはじけた直後であり、徐々に投資被害の救済を求める声が弁護士界に寄せられる時期と重なりました。被害を受けた方々の声を受けて、豊田商事事件などの消費者被害に取り組んでいた弁護士が中心となって、投資問題の研究会を作り、それがやがて弁護団として事件の受け皿となってゆきます。私はその研究会に参加して、消費者弁護士としてのスタートを切りました。
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