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平成24年11月15日
今回も、前回に引き続き、薬害肝炎弁護団の活動の話です。
前回少し触れた「恒久対策活動」というのは、通常の弁護士の活動とは少し違います。
「弁護士の仕事」と言われて通常想定するのは、裁判や警察に行くことでしょう。しかし、この「恒久対策活動」というのは、法律の制定や制度・運用の変更を求めたり、そのための調査、例えば患者さんや専門家、自治体等にヒアリングを行ったり、医学文献を読んだりする活動です。制度の改善を求めるためには、膨大な調査を地道にコツコツとしていくことが必要です。
本来立法府の仕事であるこのような活動を弁護士がしているのは、原告団・弁護団が、国との基本合意のときに、恒久対策を行うよう国に約束させたからです。国が真に患者の救済となる肝炎対策を行うよう、原告団・弁護団は耐えず監視し、時に働きかけを行う必要があります。
実際に薬害肝炎弁護団が今まで行ってきた活動の成果として、一番大きいものは、肝炎対策基本法の制定運動でしょう。これは、全ての肝炎患者の救済を目的とし、2009年11月に制定された法律です。薬害肝炎弁護団は、日本肝臓病患者団体協議会(日肝協)、B型肝炎弁護団と共同し、「もう待てない!350万人のいのち」と銘打った全国キャンペーンを繰り広げ、法の制定に向けて懸命に活動を行いました。
私が、普通の弁護士の活動とは違うこの活動に本腰を入れるようになったのは、薬害肝炎弁護団の運動を知ってからでした。署名活動、各種集会の開催、官邸前での座り込み等。通常の訴訟とは全く異なり、この原告団・弁護団は、世の中の空気を変え、民衆の怒りに火をつけ、まさに国を動かしました。そして、本件の被害者だけでなく、全てのウィルス性肝炎患者を救済するための法律まで制定させたその活動を見て、一人では無理でも、大勢が集まればこんなことまでできるんだと胸を熱くしました。それらを見て、今からではあるけれども、国を動かしてきた先輩弁護士に付いて多くのことを学ぼうと思ったのです。
今私自身が特に力を入れているのは、肝硬変・肝癌に進行してしまった患者さんたちへの支援ももう少し手厚くできないか検討し、手段を探ることです。具体的には、身体障害者の認定基準の緩和や、医療費の助成を訴えています。自分の書いた意見書が、先輩弁護士に手を加えられながらも、厚生労働省の各種部会等に提出されるというのは、非常に嬉しいもので、やりがいがあります。
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