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プロボノ活動

平成24年12月13日

始まった被害者参加  弁護士安生誠

私は、平成18年から犯罪被害者支援員会に籍を置き活動することになりましたが、この頃は、犯罪被害者支援のインフラが飛躍的に整備されていく時期でした。その代表的な出来事を挙げれば、以下の通りです。

平成16年12月1日 犯罪被害者等基本法成立 従来犯罪被害者が十分な支援を受けられず、放置されてきたことを反省し、官民を挙げての犯罪被害者支援のための総合的・計画的施策の推進を宣言。
平成17年12月27日 犯罪被害者等基本計画、閣議決定 犯罪被害者等基本法8条に基づく計画。
平成18年6月13日 組織的犯罪処罰法の一部を改正する法律及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律 犯人から犯罪収益をはく奪し、犯罪の被害者の被害回復。
平成18年10月1日 日本司法支援センター(法テラス)業務開始 被害者等の援助に精通している弁護士を紹介。
平成19年6月20日 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法の一部の改正 一定の重大犯罪について、申し出により、被害者参加人という地位を付与され、裁判所により相当と認められた場合、被害者の公判期日への出席、証人尋問、被告人質問、論告後の意見陳述
一定の重大犯罪について、有罪判決後、別途損害賠償命令の決定。

このような流れで、平成19年の刑事訴訟法等の法改正は、翌平成20年12月、施行されました。被害者の方は、刑事事件に最も関係していながら刑事訴訟手続の蚊帳の外に置かれていました。しかし、ついに、刑事訴訟手続において「参加人」として一定の地位を得ることができるようになったのです。

同時に経済的に余裕のない犯罪被害者の方に対しては、国の費用で被害者参加弁護士(被害者の方の代理人です。)を選定する国選被害者参加弁護士の制度も施行されたのです。

私は先陣を切って国選参加弁護士を経験させていただきました。これまでは検察官と向かい合いの席(刑事弁護人の席です。)にしか座ったことがありませんでした。ところが、その隣に座り、いわれなき通り魔的な傷害事件の被告人の審理に立ち会い、厳しい処断を求める論告(意見陳述)を行いました。今まで刑事訴訟と言えば、弁護士には被告人の弁護の役割しか与えられておらず、被告人に対し論告を行うとは、なんとも奇妙な気がしました。

ぎこちないものですが、被害者の方から心情を聞き取り、また、一生に一度あるかないかの不慣れな刑事訴訟手続について、逐一説明しながら、被害者の方を代弁し、その思いを法的に昇華し、法廷にぶつけました。

被害者の方と被告人・同弁護人、検察官、裁判官との間で、被害者の方の心情と真意を理解し、これを代弁することの難しさを始めて感じました。

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