トップページ > プロボノエッセイ > 一年に一度、「教師」になる日
平成25年1月17日
今日は弁護団ではなく、別のプロボノ活動の話を。
先日、大阪府下のある高校に授業をしに行ってきました。これは、弁護士が大阪弁護士会から派遣されて、希望する高校に法律の授業をしにいくというものです。私は今回で3回目です。
今回のテーマは、少年事件。どういうことをした少年が、どういう手続きを経て、どういう処分を受けるのか、うっかりやってしまいがちなことが実は犯罪にあたる、というようなことを話してきました。
毎年「今年は何人くらい寝てしまうだろう」と不安になりながら学校に向かうのですが、生徒たちは皆わりと一生懸命聞いてくれます。今年は、少年事件というテーマが良かったのか、強い興味を持ってくれたようです。生徒たちの顔はほぼ全員こちらを向いており、気持ちよく授業をさせて頂きました。
毎年よくしゃべる子が何人かいて、思ったことを口々に質問してきます。
「弁護士って裁判以外に何してるん?」
「弁護士バッジのひまわりはどういう意味?」
次々と質問が出てくるので、テンポよく回答し、時にはテンポよく突っ込むことも要求され、かなり鍛えられます。中には、「悪いことしたヤツらをなんで守るの?」というような、刑事事件の本質を突いた質問をしてくる生徒もおり、このような質問に対しては、時間をかけて説明して理解してもらうよう努めます。
この出張授業は、法教育の一環として行われています。法教育の目的は、単に法を知るということだけなく、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けることです。物事を客観的に評価し多面的にとらえる力、自分の意見を正確に伝え、他人の意見を公平に受け止める力をつけることを目指しています。
今の中高の教育については詳しく知りませんが、私が学生だった頃は、教科書を覚えればテストで点数を取ることができ、良い成績を取ることができていました。しかし、それだけでは、法教育が目指すような力を身に付けることはできません。少年事件をしていると、自己中心的、一面的なものの考え方しかできず、相手の立場を全く考えられない子によく出会います。鑑別所入所という経験を経て、再犯のおそれはないかもしれないが、このままだと社会に出たときに必ず困るだろう、という子が非常に多いです。
より多くの高校で、法教育を取り入れて頂き、多面的に物事を考える力を身に付けて欲しいと強く願っています。
top