トップページ > プロボノエッセイ > 犯罪被害者支援の新たなフェーズ
平成25年2月27日
平成16年12月1日に制定された犯罪被害者等基本法成立を機に、この10年間で、日本の犯罪被害者支援に関する司法制度は飛躍的に進歩してきました。
うち、司法へのアクセスに関しては、平成12年、公判記録の閲覧謄写等公判への情報アクセスが改善され、また、単なる証人から意見を述べることのできる主体になりました。さらに、平成19年の改正では、公判の参加人として準当事者の地位を与えられ、求刑意見も述べることができるようになりました。
従来の刑事司法手続において、いわば蚊帳の外にあった被害者が、一つの主体として扱われるという意味で犯罪被害者の人権の地位が確立してきたといっていいでしょう。
このように犯罪被害者の刑事司法的人権が改善され、他方で、犯罪被害者の経済的人権もクローズアップされるようになってきました。
犯罪被害者の損害が甚大であるほど、もとの経済状態に戻すために民事責任の追及が必要になります。皮肉なことに、そのような場合ほど加害者に賠償能力がありません。加害者が不明な場合もあります。そのため、民事判決を得るために時間と費用をかけたことが徒労と化してしまいかねません。判決を得ても、加害者からの履行がなく、かつ、被害者が強制執行手続をとらなければ、判決の確定から10年間で時効により消滅してしまいます。これを回避しようとすれば、さらに労苦が重くなります。追うほどに苦しまなければならないという自家撞着を強いられるという苦い報告があります。
もともと、加害者に損害賠償能力がないことが多いことから、被害者の経済的な回復のため、犯罪被害者等給付金支給法が制定されました。今の支給法は、国の恩恵による一時金としての見舞金制度であり、治療費と休業損害への補償は合計120万円まで、これを使い切ってしまえば、自己負担です。後遺症でその後の仕事ができなくなってしまっても、死亡した場合でも1回の補償限り(建前上は最高約4000万円ですが、逸失利益の計算項目の単価は低く抑えられ、交通事故の犠牲者(遺族)に対して民事の判決で命ぜられる損害賠償の計算とは雲泥の差があります。)。つまり、実質的に休業損害、逸失利益に当たる手当について、損害を填補するというのにはほど遠いのです。
犯罪については、交通事故のように誰でも被害者にも加害者にもなる問題とまでは言えないにしても、誰でも被害者になる確率はあります。テロの被害はその典型です。
主要先進国がこのような問題にどう対処しているかは参考になります。アメリカは自助の国だけあって他のいかなる方法でも回復がなされない場合の最後の救済措置としているのを対極に、ドイツは国民の安全を守れなかったこと自体が国の責任として手厚く保護しています。フランスは、国民的連帯として、犯罪被害者を救済し、かつ、責任主体に対して徹底的に責任を追及しています。イギリスは、社会連帯共助の精神に基づきますが、保護は比較的厚いようです。
日本の国民性、文化・風土からすれば犯罪被害者を手厚く保護しつつ、他方、日本政府の厳しい台所事情に鑑みれば、かつてRCCが悪質な業者から債権を回収したように、責任を追及する制度の構築がカギになっているような気がします。
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