トップページ > プロボノエッセイ > ストーカー法とDV法の改正で思うこと
平成25年7月18日
ストーカー行為の規制を強化する法律(ストーカー法)の改正案と配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV法)の一部を改正する法律案が6月に成立しました。
各法案の提出には、それぞれ、順に背景となる事件がありました。女性が元交際相手に殺害された2012年の事件(逗子市ストーカー殺人事件)で、被害者に1000通を超えるメールが送りつけられましたが、メールの送信は規制対象ではなく警告など行われませんでした。また、元交際相手から暴力を受けていた女性の母親と祖母が殺害された2011年の事件(西海市ストーカー殺人事件)で、ストーカーの被害者、家族、加害者は、千葉、長崎、三重と離れていたところ、千葉県警にストーカー被害の申告後の情報が長崎県警に提供されていないということもありました。被害者の住所地がある都道府県の警察(千葉県警)だけが警告を出す仕組みの問題点が指摘されていました。
形式的に見れば、法の発動要件や管轄を拡張することで対応できるようにも見えます。しかし、もう少し丁寧に事件の経過を見てみれば、逗子市の事件では、不用意に逮捕状に記載された被害者の住所を被疑者に示してしまったこと、西海市の事件では、最初に相談を受けた担当者が慰安旅行に行き、初動が遅れたことが指摘されています。
制度がないということは口実であり、一つの事件について丁寧に被害者から事実経過を聴取し、客観的証拠の提示も求めれば、経験的に見て、最悪の事態の発生する虞はある程度予想できたのではないかと思います。そうであれば、予防策を検討したり、講じたりできたとも思えます。
私たちは、しばしば、依頼者を代理して、または、同行して、所轄の警察署に助けを求めに行くこともあります。職印を押した被害届、あるいは、告訴状を受理してもらえないこともよくあります。それでも、そのコピーは受け取ってもらい、相手方に直接電話を入れたり、何らかの警告を発したりしてもらえるので、それで事件が収まることもあります。
他方で、残念ながら、「頭のおかしな人の言っていることは多すぎて取り上げていられない」、「言葉(手紙)だけで、まだ何もしていないのだから、何もできない」…と面倒くさそうにあしらわれ、コピーさえも受け取ってもらえないこともあります。
西海市ストーカー殺人事件の判決の際、遺族は、日弁連に対しても、要望を述べられたようです。「広域にわたる事件の被害者支援を充実させるため、法テラスや日弁連、裁判所、検察庁に連携、協議をしてもらいたい」と。
弁護士が、被害者側から相談をお受けしたとして、当該事案が重大事件に発展する可能性があれば、警察署の係官に丸投げして終わりというのではなく、忙しい係官に対して、時にストーカー的に事案の危険性を訴え、こまめに情報を提供し、共同戦線を張ることも、大事なことだと思います。
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