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プロボノ活動

平成26年8月25日

被告人の弁護と犯罪被害者の弁護  弁護士安生誠

被告人の国選弁護人の制度については、多くの方がご存知のことと思います。大阪地裁管内において、刑事事件の82%は国選弁護人が付いています(対象事件6654件に対し、被告人国選5457件)。残り18%の被告人が私選で弁護人を選任しているということになります。

これに対し、国選被害者参加制度については、大阪地裁管内において、被害者参加対象事件の2%以下しか国選弁護の制度が利用されていません(対象事件1500件(推計)に対し、国選被害者参加27件)(平成24年司法統計等より)。では残りの98%が犯罪被害者が私選で弁護人を選任しているかというと、そういうことでもありません。具体的統計はありませんが、恐らく国選の利用者より低いのではないかと思われます。

 

この数字の低さについては、犯罪被害者について、そもそも刑事裁判に参加できることをご存知ないとか、国庫補助の制度をご存知ないとか、怖い思いをした加害者ともう関わりたくないと思われるなど様々な背景が考えられます。被害の程度、犯行態様、加害者との関係など種々の事情にもよりますが、私が被害者参加弁護士として関与させていただいた案件を通じて、犯罪被害者の方が刑事裁判に積極的に関与することは、実に精神的・肉体的・経済的負担を伴うものであり、相当の覚悟が必要だということは疑似体験しています。

   

他方で、被害者参加に至らない範囲で、犯罪被害者の方からの弁護士に対する支援の需要は高まってきていると思います。大阪弁護士会の犯罪被害者弁護ラインに寄せられる相談は、年間300件に達し、法テラスを経由して犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士(被害者支援弁護士)の紹介依頼案件は、3年連続で倍増の勢いです。

 

特に、昨今、被疑者にまで国選弁護人制度が拡大され、しかも対象犯罪も長期の法定刑が懲役3年以上の犯罪にまで拡大されたため、捜査段階で多くの国選弁護人が選任されています。これに伴い、捜査段階で、被害回復の申し出のために犯罪被害者に対して、コンタクトを求めてくるケースも多くなってきていると思われます。犯罪被害者の方には、いきなり、加害者の弁護士が連絡してくるなり、示談を迫られたとして、戸惑われるケースもよくあります。また、犯罪被害者支援の民間団体の活躍や公的機関の広報により少しずつ、弁護士が被告人だけでなく、被害者の支援を行っていることも市民に知られてきたという事情もあろうと思います。

 

このような弁護士に対する被害者支援のニーズの高まりに対し、弁護士会の委員会の仲間を中心に、犯罪被害者の専門相談を行えるようにしようということになりました。これまでは、ほとんどが犯罪被害者⇒法テラス(コールセンター)⇒法テラス大阪事務所⇒大阪弁護士会という弁護士紹介の流れでした。これからは、直接、弁護士会にご相談に来ていただいたり、弁護士紹介を求めにお越しいただけるよう門戸を広げましょうということで、仲間と汗をかいています。

 

なお、身体に対し侵襲を加えられた事件など一定の犯罪被害者については、刑事裁判に参加することができ、一定の資産以下であれば、国の負担で、弁護士に対し、被告人に対する質問などの公判廷での活動を委託することができますので、詳しくは法テラスのページをご覧ください。

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