トップページ > プロボノエッセイ > 肝疾患にかかる障害年金制度の改訂
平成26年12月3日
今年、障害年金制度の大きな改訂がありました。肝疾患についての認定基準が大幅に緩和されました。私も薬害肝炎弁護団、B型肝炎弁護団の一員として制度の改正に関わらせて頂いたので、お話したいと思います。
多くの疾患と同様、肝疾患についても、症状が重症な方は障害認定を受けることができます。現在、障害認定制度には、障害年金を受け取る方法と、障害者手帳を利用する制度の2つの制度があります。私たち原告団・弁護団は、いずれの制度も現行の基準が肝炎患者の生活実態に合致していないと主張し、基準の緩和を長らく求めてきました。その運動の成果もあり、先般、まず、障害年金の制度の改訂がなされました。
従前、障害年金制度は、そもそもどのような状態になれば認定されるのかが不明確でした。それが、以下のような基準に緩和されました。
(クリックするとPDFが開きます)
変更点の詳細についてまではここでは立ち入りませんが、これは大幅な緩和と言ってもよいと思います。もちろん、私たちの要求が全て通ったわけではありません。しかし、今回の改訂は、個人的には、評価できる部分が多いと思っています。
改訂にあたっては、厚生労働省で何度も専門家医師による会合が開かれ、どのように改訂すべきかが議論されました。私たちの希望する方向に議論を進めてもらうため、毎回、原告団・弁護団から多くの参加者が東京まで足を運び、会議を傍聴し、必要に応じて意見書も提出しました。各患者団体から代表者が、厳しい生活実態や辛い心情を吐露されました。また、弁護団からも特別に会合で意見を述べさせて頂きました。
今回の改訂がわりとスムーズに進んだのは、厚生労働省と私たち原告団弁護団が同じ方を向いていたからだと思います。私たちは訴訟団体ですので、厚生労働省とは対立構造と見られがちですが、肝炎患者の方々が住みやすい世の中を作っていくためには、施策を実施する国と協働していく必要があります。私たちは、限られた予算の中で国に制度を実現してもらうために、患者の生活実態が分かる資料を提出し、その制度がなぜ必要かを理解してもらわなければなりません。闇雲に主張を戦わせるのではなく、この「協働する」という姿勢を、次の大きな目標である医療費助成実現に向けて生かしていきたいと思います。
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