介護事業者数の増加、介護事業の需要の高まりを受けて、政府は、介護事業が雇用吸収力の高い事業として期待しています。そのため、介護事業所の職場環境を向上させたり、介護業界で働く人を増やすことに力を入れており、そのための助成金が支給されています。
ただ、助成金は新設や廃止が頻繁で、また、短期的に統廃合をくり返し名称が変更されるため、なかなかその把握が困難なところがあります。例えば、従前、「介護基盤人材確保助成金」や「介護未経験者確保等助成金」といった介護事業主向けの助成金が現在は廃止されています。また、一部の助成金は事業予算額が上限に達する見込みになると受付が停止されることもあります。利用勝手の良さそうな助成金は早期に計画を立てて利用を検討することが必要です。
さて、現在(平成25年12月)、介護事業所関連で注目すべき助成金は、以下のものが挙げられます。今後、新たな助成金が新設されれば、随時ご紹介していきたいと思います。
分野 | 助成金の名称 | 対象となる方 | |
---|---|---|---|
採用 | トライアル雇用奨励金 | 経験不足等による就職困難者の試行雇用をお考えの方 | |
特定就職困難者雇用開発助成金 | 60歳以上65歳未満の高齢者や障害者、母子(父子)家庭の母(父)の採用をお考えの方 | ||
高年齢者雇用開発特別奨励金 | 65歳以上の離職者の採用をお考えの方 | ||
人事・労務管理 | 評価・処遇 | 中小企業労働環境向上助成金(雇用管理制度助成) | 従業員に対する評価・処遇制度、昇進・昇格基準の導入等をお考えの方 |
研修 | 新入社員研修、管理職員研修の導入をお考えの方 | ||
健康づくり | 腰痛健康診断、メンタルヘルス相談等の導入をお考えの方 | ||
キャリアアップ | キャリアアップ助成金 | 非正規雇用者の活用をお考えの方 | |
家庭との両立 | 両立支援助成金 | 従業員の職場生活と家庭生活の両立を支援したいとお考えの方 | |
設備導入 | 中小企業労働環境向上助成金 (介護福祉機器等助成) | 新たな介護福祉機器の導入をお考えの方 |
この助成金は、介護労働環境向上奨励金(旧名称:介護労働者設備等導入奨励金)と中小企業人材確保推進事業助成金が統廃合されて平成25年度から新設された助成金です。
健康・環境・農林漁業分野等の事業を営む中小企業事業主(介護事業主の場合であれば、常時雇用する労働者数が300人以下で、資本金等が3億円以下の事業主)に対して助成するもので、雇用管理改善を推進し、人材の定着・確保を図ることを目的としています。
内容は、「雇用管理制度助成」と「介護福祉機器等助成」に分かれ、特に前者の中の「健康作り制度」と後者の助成金は、介護関連事業主特有のものになります。
なお、本助成金について詳しくは厚生労働省のHPをご覧下さい。
中小企業主が、労働者の労働環境の向上を図るために、雇用管理改善につながる制度等を導入し、適切に実施した場合に、導入した制度に応じた定額を支給する制度です。
この助成を受けるためには、「雇用管理制度整備計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けることが必要となります。
介護事業所における人材不足、離職率の高さにお悩みの方も多いと思いますが、その対策の1つは、魅力ある労務管理体制を作りです。また、専門的技術が求められ、重労働を要求される厳しい労務環境におかれる労働者も多いことに鑑みると、研修制度や健康づくり制度の充実も疎かにはできません。
「良い人材を確保し、育て、定着させる」という流れを構築するためにも、本助成金の活用を検討してみることをお勧めします。
導入制度に応じて30万円または40万円です。
対象となる雇用管理制度は、(1)評価・処遇制度、(2)研修体系制度、(3)健康づくり制度の3つで、詳細は以下の表のとおりです。
雇用管理制度 | 具体的な例 | 支給額 |
---|---|---|
評価・処遇制度 | ①評価・処遇制度の導入 ②昇進・昇格基準の導入 ③賃金体系制度の導入 ④諸手当制度の導入など |
40万円 |
研修体系制度 | ①新入社員研修、②管理職員研修、③新任担当者研修、④特殊技能習得研修など ※Off-JTであることが必要 ※1人につき10時間以上の教育訓練等であること ※教育訓練等の期間中の賃金について、減額されずに支払われていることが必要 |
30万円 |
健康づくり制度 | 法定の健康診断以外の制度で、①腰痛健康診断、②B型・C型肝炎検査、③インフルエンザ予防接種、④結核検査、⑤検便、⑥メンタルヘルス相談、のいずれかの制度を導入 ※健康診断等の受診により費用を要する場合は、その費用の半額以上を事業主が負担していることが必要 |
30万円 |
介護関連事業主が、介護労働者の身体的負担を軽減するために、新たに介護福祉機器を導入し、適切な運用を行うことにより、労働環境の改善がみられた場合に支給される助成金です。
この助成を受けるためには、あらかじめ「導入・運用計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けることが必要となります。
なお、対象となる介護福祉機器は以下のものになります。
本助成金を活用することで、介護労働者の業務負担の軽減(例えば腰痛防止など)を図ることが期待出来ます。重労働が多く女性も多い職場環境の中で、そのような負担軽減となる機器を導入することは、人材活用の効率化にもつながり、また、魅力ある職場作りの一助にもなるのではないでしょうか。
ただし、機器を購入してしまった後では申請出来ません。事前に事業計画をしっかりと立てた上で、必要であったり買い替えるべき介護福祉機器がある場合には、すぐに購入してしまうのではなく、時期を見据えて本助成金を計画的に上手く活用しましょう。そうすることで、コスト削減の大きな武器の1つとなり得ます。
導入に要した費用の2分の1 ※上限300万円
また、介護事業に特有のものではありませんが、介護事業所の一般的な労務環境から役立ちそうな助成金も併せて幾つかピックアップしてご紹介します。詳細は各リンク先をご覧下さい。
※詳細はこちらをご覧下さい
非正規雇用者の割合が高い事業の中で、助成金を利用することで、そういった人材の活用とともに、魅力ある職場環境をアピールすることで労働力不足解消につながることが期待できます。
なお、本助成金はいくつかのコース選択ができるのですが、コースの中には上でご紹介した中小企業労働環境向上助成金(個別中小企業助成コース)の中の雇用管理制度助成と内容的に似通っているコースもありますが、二重に支給申請することはできませんので、ご注意下さい。
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介護事業所は女性労働者の比率が高いため、育児と仕事の両立を支援することは重要な課題です(特に子育て期短時間勤務支援助成金が有用かと思われます)。
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介護事業所では慢性的な人手不足に悩んでいる方も多いと思います。そこで、新たな人材を雇用する際に活用しやすい助成金を3つご紹介します。いずれも、これらの助成金を得るために安易に雇用するということはお勧めしませんが、将来的な事業計画の中で、新規に雇い入れをする必要がある場合には、利用することで一部の経費が削減されることになります。
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