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企業支援エトセトラ

令和2年11月9日

26.インターネット上の海賊版に対する取締り(令和2年著作権法の改正)

「はるか夢の址」事件、「漫画村」事件をご存知でしょうか。前者は、リーチサイトと呼ばれる無断コピーされた漫画や書籍の海賊版サイトへインターネット利用者を誘導したこと、後者は、漫画の海賊版サイトを運営したことが問題になった事件です。それぞれの運営者らは著作権法侵害により懲役刑の判決を受け、民事上の損害賠償責任の追及も受けています。前者は、1億6,000万円の賠償を命ずる判決を受けています。このような被害は漫画の分野だけでなく、写真集・文芸書・専門書、ビジネスソフトなどにも及び、インターネット上の海賊版による被害は深刻さを増してきています。

そこで、この度、著作権法改正により、①ユーザーを侵害コンテンツに誘導する「リーチサイト」等の規制や、②侵害コンテンツのダウンロード違法化の対象範囲が拡大され、去る10月から施行されています。

他方、上記規制の施行により、表現活動が過度に委縮しないように、緩和措置もとられています。

改正内容

2.1. 許可のない公衆送信の禁止(従来より)

著作権者の許可なく著作物をインターネットを利用して公衆へ送信することは禁止(著作権法23条1項)(法定刑懲役10年)

↑ 実効化

2.2. 許可のないアップロードの禁止(従来より)

著作権者の許可なく著作物をインターネット上にアップロードすることは禁止(著作権法23条1項)(法定刑懲役10年)。

 

サーバーなどに蓄積された情報を公衆からのアクセスに応じ自動的に送信するシステム(自動公衆送信)を用いた場合、そのサーバーに蓄積すること(送信可能化)が禁止される。例えば、ワンクリックすればダウンロードできるような状態にすること。

 

2.3. 違法にアップロードされたサイトに誘導することの禁止 (令和2年改正)

「リーチサイト」(違法にアップロードされた著作物へのリンク情報を集約したサイト)を運営・そのアプリを提供することは禁止(著作権法113条2項)(法定刑懲役5年)

↑ 実効化

リーチサイトへのリンク提供行為も禁止(著作権法113条2項)(法定刑懲役3年)

↑ 実効化

2.4. 違法にアップロードされた著作物のダウンロード禁止(令和2改正)(但し、施行は令和3年1月1日から)

違法にアップロードされた著作物(音楽・映像から著作物全般(漫画・書籍・論文・コンビュータプログラムなど)に拡大)を、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードすることは禁止(著作権法30条1項4号)(法定刑懲役2年)

緩和措置

国民の情報収集等を過度に萎縮させないよう、配慮がなされました(施行は令和3年1月1日から)。

 

違法アップロード著作物のダウンロード一般が処罰されるわけでなく

↓ ①絞込み

まず、規制対象は、違法にアップロードされたものであって、かつ、正規版が有償で提供されているもの

↓ ②絞込み

また、行為は、反復・継続してダウンロードを行うこと

↓ ③絞込み

そして、行為者は、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードすることこと(違法性の認識)

↓ ④絞込み

さらに、3つの例外を設け、禁止対象外とする。

ア 漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの

例えば、数十ページで構成される漫画の1コマ~数コマのダウンロード(量的軽微)、サムネイル画像のダウンロード(質的軽微)

イ 二次創作・パロディ

例えば、原作の漫画を元に、許諾なく、登場するキャラクターを描写すること

ウ 「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合

例えば、詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること

まとめ

今や、日本人全員がクリエーターといっては、大げさですが、インターネットのインフラが隅々まで行きわたり、多くの人がネットに情報を発信し、また、多くの情報を得、これをコメントと共に(不特定の)第三者に伝達することが日常茶飯事になりました。

仕事につけ、余暇での活動につけ、違法アップロード著作物に出くわすリスクは高まっています。

普通にネットを利用する限り、違法行為として処罰されることはありませんが、この機会に著作物の価値と著作者の権利を再考する機会にしていただければと思います。

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